悪魔がウチにおりまして・296
ウチには悪魔が……。
「宝田さん、おかえりなさい!」
気持ちわるっ!
私が家に帰るやいなや、悪魔が腰を45度折り曲げて帰宅のご挨拶。
「あ、悪魔?どうしたの?悪いものでも食べた?」
「いえ!そのようなことはありません!ワタクシ、いつもの通りでございます!」
なになになに!?
え、ツッコミ待ち?なんかの罰ゲーム!?
「ただいま戻りまちたー」
「権之助さん、おかえりなさい!」
帰ってきた狐、後ろ手に扉を閉めると壁伝いに沿って歩き、私の後ろに隠れる。
「宿主殿、怖い」
お前もか、ブルータス。
私も怖いよ。
「怖がらなくても大丈夫です!ご飯の準備は済んでおりますので!」
ねぇねぇねぇ!?怖いし!雪降ったほうがまだ普通に感じるよ!?
狐と抱き合っているとお姉と牛が帰ってきた。
「ただいまー」
「宝田さん!兎田さんおかえりなさい!」
区別付けなさい、どっちかわからないでしょ。
「あれー、気持ち悪ーい」
そんな朗らかに言いますか!?
「ミミさん、どうしました?ダメですよー、拾い食いしたら」
牛と解釈一致は屈辱だわー。牛は耳をほじほじしたあと悪魔に尋ねる
「面倒なので説明どうぞ」
「はい!ワタクシがどれほど社会不適合か教育を受けまして!」
しっかり洗脳されてません!?
「あー、昨日のアレですかー。どうせ3日も続かないでしょうから放っておきましょう」
せやかて、牛!信じられないほど気持ち悪いんですが!?
「おや、皆さま固まっておりますがいかがなさいました?」
こんな澱んだ空気の中に羊登場。
「ねぇ、羊、悪魔が……」
「あ、ヤギさんちーっす」
全員、目が点。
「み、ミミ君……?」
「ヤギさんもだめっすよー?ちゃんと専務に服従しないとー」
サビついたナットの如く、軋むように首を回しながら周囲を見回す。
わからんわからん。ウチらも聞きたいわ。
そんな中、ロフトから見下ろすクモとうぱ。
なにかごにょごにょ相談して……飛び降りた、悪魔を目指してる。
首を打った!?
崩れ落ちる悪魔、誇らしげなクモ。どうなってんだ、今日は!
「……あれ?ニンゲン、おかえりですー?みなさんどうしました?」
「悪魔ー!!」
ウチには元に戻った悪魔がいる。
思わず抱きしめたよね。




