悪魔がウチにおりまして・294
ウチには悪魔がいる。
押入れからマイマイの寝袋を引っ張り出して来た悪魔が。
「みぎー!」
光る閃光、響く轟音。
こんな暑い日に夕立がくれば、そりゃ雷のひとつやふたつ落ちるってものよね。
「か、かみなり、やんだですか?」
アクマイマイから顔を出し、震える悪魔。
「アンタ、雷使うでしょうに」
コイツ、自分で雷ぶっ放すのに、外からの雷弱いってどういうことなのよ。
「ニンゲンもトイレ行くけど、頭からかぶるの嫌でしょ!?」
わかるんだか、わからないんだか反応に困るたとえを出しおって。
「それはそうと。押入れの中の方が静かじゃない?」
「ニンゲンはわかってません。建物の端は危険です、落ちてきます」
こっちの理屈はわかる気がする。
「ミミ殿、震えるのも結構ですが、もう少ち右に。その位置は一番邪魔になります」
そう言いながらアクマイマイを蹴り蹴りして部屋の端に追い込んでいく。
狐、遠慮ないなぁ。
「しかし本当に止まないわね」
さっきからどっしゃんどっしゃん雷が鳴り、雨が降り続ける。
「こちらの天気は安定ちませんね。やはり管理をちっかりしないと」
狐が腕を組んで空を見上げる。
「そういえば狐ちゃんたちって天気操れるの?」
天気雨のことを狐の嫁入りっていうのを思い出して聞いてみる。
「……あー」
狐が眉をひそめてなんだか言いにくそう。
「天気雨って、その時に狐族が見える、霊知の高いニンゲンを連れて帰る生贄回収じゃなかったでしたっけ?」
悪魔が顔を出す。
狐、めっちゃバツが悪そう。
「狐ちゃん?」
「違うのです!ボクたちの種族はヒトさらいなんてちません!」
半分涙目、一人称まで変わっているから相当動揺しているなー。
「それにニンゲンそのもの攫って食べるより、この世で修行してウチに帰依ちてもらったほうが豊かです!」
それってつまり。
「労働力確保、ですねぇ」
畳から半分顔を出した牛。
それだけ言って去っていく。
「兎田殿ー!ボクらの印象がとっても悪くなります!」
そう叫びながら狐は畳の中に消えていった。
ウチには悪魔がいる。
「ニンゲン、ジャーキー食べます?」
「どこに有ったの?」
「マイマイの中に」
「捨てろ」




