悪魔がウチにおりまして・292
ウチには悪魔がいる。
玄関の前で仁王立ちしている悪魔が。
「ニンゲン、なりません」
あの、これから会社なのですが。
「ニンゲンは昨日倒れています。おバカなのです、休むのです」
普段だったら折檻で押しのけるのだが、事実倒れたのは私。
つまり、悪いのは私。
だけど、ニンゲンの世界は倒れたくらいでは休めぬのだよ。
「悪魔さん、会議をしましょう」
「心得ました」
素直に床に座る悪魔。
ちっ、ズレたらそのまま出ていったのに。
「この世界ではよほどのことがないと休めぬのです」
「こっちとは比べ物にならないくらいブラックなのは知ってます」
傷付けられた!ヒトの尊厳傷付けられた!
しかして私は負けません。
「急に休むと他の人に迷惑がかかります」
「かけとけばいいです。相手が体調不良の時に迷惑かけられてチャラなのです」
くぅ!?間違いないぞ!?
「繁忙期なので、みんなカバーできぬのです」
「そんな組織運営している経営者はクビを変えましょう」
嗚呼、このまま信奉者に鞍替えしたい甘言で誘う!
「お給料が減って、ご飯が減ります」
「それは困ります」
よし、情けないが道は……。
「ボクが出勤するのです」
「待ちなさい、ケモノ」
さすがに口が悪いけど仕方ない。
「自分の見た目、わかる?変化できるとはいえ、地雷子ちゃんが出勤できるわけじゃ……」
「ニンゲン、なめちゃいけません。えいっ!」
モクモクと出た煙。その中から出てきたのは……うん、私だ。
「どうです?ニンゲン!そっくりでしょう?」
確かにまんま私。だが、待たれよ。
「ねぇ、やめよ?」
「止めても無駄です!とう!」
「悪魔ー!」
風と共に、悪魔は去っていった。
明くる日、悪魔の許可が下りて出社すると、どうにも周囲がよそよそしい。
なんか、目を合わせてくれない。
「宝田さん、ちょっといい?」
「課長、おはようございます」
なんだか課長の顔、引きつってるけど。
「……悩みがあったら、聞くからね。いろいろ追い込んでしまっていたみたいで、申し訳ない」
「えと、はい、おねがいします」
……悪魔!!
何をしでかした!!!




