悪魔がウチにおりまして・29
ウチには悪魔がいる。
イベント事に敏感な悪魔が。
「ただいまー」
「ニンゲン、おかえりなさい!」
仕事から帰ると家の中が何やら飾り付けられており、悪魔がシーツに包まって出迎えてくれた。
「…なにしてるの?」
「知らないのですか。ハロウィンですよ!」
そういうと手を引いて居間へ誘う。
ちゃぶ台の上にはシチューやパウンドケーキが並んでいる。
「アンタたちで作ったの?」
ウチに居座る3匹の動物たちはハイタッチをしながらお互いを称え合っているが問題はその格好である。
悪魔は白いフード…というよりもシーツをかぶって目だけ出している。
狐は自前で拵えたのだろう、しっぽを増やして4本にして着物を着ていた。
クモ…どこ行った?
きょろきょろを探していると部屋に有ったカボチャから8本脚が飛び出して突進してくる。
怖いわ!
「全く。若い子たちはこういうこと好きですねぇ」
水を流す音と共にトイレから出てきた羊。
頭に赤い帽子、顔には付け髭を付けている。
イベントを間違えているのは放置。
「ニンゲン、料理が冷める前に食べましょう」
「宿主殿、ささ、こちらに」
狐が座布団をポンポンとはたきながら指し示す。
「そう?それじゃ」
皆でちゃぶ台を囲むと、手を合わせて食べ始める。
スプーンを入れてシチューを飲む。美味しい。
「ニンゲン、どうですか?」
悪魔はのぞき込んで来るように恐る恐る窺ってくる。
「アンタが作ったの?料理上手になったね」
素直に感想を言うと、悪魔は顔を赤くしながらシチューを飲んでいく。
「あ、そうだ!とりっく・おあ・とりーと!お菓子をくれなきゃ」
「あるわけないでしょ」
その言葉に3匹の子ども+大人げない1匹が食事の手を止めた。
「そんな!今日一番のイベントですのに!」
今にも泣きだしそうな悪魔をはじめ、残りのケモノも今にもとびかかって来そうである。
その反応にスプーンを加えながらカレンダーを指さす。
「11月1日ですが…」
「ハロウィンは昨日です」
私の言葉に4種類の動物たちは泣き出してしまうのでした。
羊は泣くなよ。
ウチには子どもたちが居る。
少々詰めの甘い、子どもたちが。
明日、お菓子の詰め合わせ買ってあげましょ。




