悪魔がウチにおりまして・3
ウチには悪魔がいる。
既に1週間も居座っている、悪魔が。
「ニンゲン、もう9時ですよ。遅刻しますよ」
「今日は休み、ゆっくり寝させ…まぶし!」
いきなりカーテンを開けられて、起き抜けには少しキツイ日の光を受けて目をこすりながら布団の中に潜る。
「それならば、なおのこといけません。休日こそ人生の本番なのですから」
現代日本において休日を本番などと思う人はよほど充実している人生を歩んでいる人間だけに違いない。
この悪魔はたまの惰眠すら許してくれないというのか。
むしろ、堕落させる側ではないのか。
「そうだ、ニンゲン。今日は出かけてくるので帰りが遅くなります。晩御飯までには帰ると思いますが遅くなったら食べててください」
悪魔はそういうと身支度をして玄関から出ていってしまった。
カシャンと鍵の回る音がした。
いつの間に合いカギを作っていたのか。
「うるさいのが居なくなったし、のんびり寝て…出かけた?あの姿で?」
あのなんの動物と表現したらいいかわからない生き物が、街に…。
その時にパトカーが通る。
瞬時に悪魔が泣きながら連行されているビジョンが浮かぶ。
「か、関係ないし。むしろいなくなってくれたほうがせいせい…」
少しの間。
もぞもぞと布団から抜け出して着替えを始めた。
とはいえ今から追いかけるって言ってもどこに向かったかわからない。
「にゃー」
…ネコ?
足元に見慣れないネコが居る。
じっとこっちを見て近付くと歩き出してしまった。
なぜか追いかけたほうがいい気がしてそのまま進む。
ネコは一定の距離で振り返りながらついてくることを確認しているようだ。
案内してくれている?そんなわけないだろうが。
「あ、悪魔」
ネコに付いていった結果悪魔を見つけることが出来た。
あの格好のまま、風船を配っている。
「本日開店でーす。お子様に風船配ってまーす」
…バイト?
もしかして前に言った生活費のこと気にして?
「ネコちゃん、ありがと…あれ?」
先ほどまで足元に居たはずのネコはいつの間にか消えていた。
「ただいま、帰りましたー。あれ?いい匂いですね?」
「おかえり。遅かったね」
ちゃぶ台の上にはステーキが乗った皿をふたつ用意しておいた。
「食べてなかったんですか?うわぁ、お肉ですね!なにか良いことでもありました?」
「別にー。軽く温め直すから他にも食べたい物ある?」
「呪い豆!」
納豆に謝れ、この悪魔め。