悪魔がウチにおりまして・286
そういえばウチには悪魔がいた。
羊やら、牛やら、偶蹄類の悪魔が。
「ニンゲンさん!今日は冷やしぼたもちを持ってきました!」
悪魔が出かけてからというもの、羊が甘いものを持ってくるようになった。
そのこと自体は構わないのだが、最近の暑さ+羊の住んでいる狐ビルまでの距離を考えるとわざわざ寄ってくれているのは明らか。
なんでなんだろう。
「クモー、羊のおじちゃんがお菓子持ってきてくれたよー」
わーいとばかりに両手を上げてするすると降りてくる。
ロフトには今か今かとぼたもちを待っている分体たちが目を輝かせている。
「クモくんたち全員の分はありませんから、2つをみんなでわけるのですよ」
クモ本体は少ししょげながら頷いている。
目の端で分体たちがカサカサ揺れているんだが、悲しんでいるのか?
「さすがに居る数がわからないのでみなの分は買って来れないのです」
羊でも全員の数把握できないのかー。
「そもさん」
「せっぱ」
「なんでアンタここに顔出してるの?」
あと、なんでせっぱ知ってるの?
「ほら、ミミくんが里帰りしているでしょう?ニンゲンさんが寂しい思いで枕を濡らしているのではと」
話の途中で羊の両角にスリッパを履かせる。
そんな帰って来ることわかっているのに寂しがるわけないでしょう。
「おんやぁ?まるで帰ってこないなら寂しいような言い草ではないですかぁ?」
「口に出してないことを読まないの」
スリッパを取るために伸ばしていた両手を口元に持っていき、厭味ったらしく言ってくるマトン肉。
「そりゃこれだけ一緒に暮らしていたら寂しくもなるでしょ」
私の言葉を聞いた羊は目を丸くして角を落とした。
どういうリアクションよ、それ。
うぱが漂ってきて頭を撫でてくる。止めなさい。
「素直過ぎて、からかい甲斐がありませんね」
「うるさいなー」
羊、なおも煽るような笑みを浮かべる。
「仕方ありません、晩御飯は私が作りましょう。左様、ちゃーは」
その言葉の最中、クモが全員ですっ飛んできて羊にまとわりつく。
まるでチャーハンにトラウマが……あるね、この子たちは。
晩御飯は羊作。
ケチャップライスはセーフってガバガバ判定なのね、クモたちは。




