悪魔がウチにおりまして・284
ウチにはサムゲタンがいる。
本人がそう名乗っているんだから仕方ないでしょう。
先ほどからウチに居座っているアヒルは名を名乗り、悪魔がいるかと尋ねてどっしり座っている。
「鍋要ります?」
「ミミちゃんから聞いた通り、無礼ですねアナタ」
じとーっと私のことを見つめる目は友だちの同居人に向けるそれではない。
「ヒトの家に居座っているアンタに言われたくない。悪魔、私のことどんな風に言ってるのよ」
ちょっとばかし気になる。
ええ、ほんのちょっとだけです。
「すぐ殴る、ご飯が美味しい、殴られると痛い。そんなところです」
悪魔が帰ってきたらご希望通り殴って差し上げましょう。
「結構な言われようね」
「事実っぽくて安心です」
悪魔族、無礼な子多くない?
「おや、サムちゃんじゃないですか。久ちぶりー」
狐がふらりと帰って来るとアヒルに挨拶。
ここも知り合いか。
「ごんちゃん。この前会ったのはいつでしたっけ?」
「某が修行に入る前ですので……300年くらい?」
相変わらず時間の感覚が長期間でついていけません。
「ちかし、どうちたの?ニンゲン界、嫌いでしょう?」
さっきから不機嫌に見えたのはこっちが嫌いだったのね。
「ミミちゃんに同窓会の招待状を。今年はみんな集まりそうだからミミちゃんにも来てほしくて」
あっちでも同窓会なんてあるんだ?
「前回の開催っていつでちたっけ?」
「200年。ごんちゃんにも招待状渡しておくね」
アヒルは自分の背中をついばんで封筒を取り出す。
どうなっておるんじゃ。
「ありがとうー。ただ今回も某不参加かな」
「まだ修行忙しいの?」
「うん、やっと尻尾を増やす許可が下りたところ。あと500年はダメかなぁ」
アンタこの前地獄旅行してなかった?
「ただいまですー。あー!サムちゃん!どうしたですかー!?」
主賓、帰宅。待ちくたびれて羽根をついばんでいたアヒルは封筒を取り出した。
「同窓会。今回ヨルちゃんくるからミミちゃんも」
「あう!?よ、ヨルちゃん!?……ニンゲン、行ってもいいですか?」
つぶらな瞳を向けてくる悪魔。
「いいんじゃない?」
「やったー!そうしたら5日間空けますので!」
同窓会って、そんなにかかるのか。
と、言うわけで。
ウチには悪魔がいなくなる。
変な生き物は居続けるけどね。
ミミ、しばらくいません。




