悪魔がウチにおりまして・280
ウチにはギャルがいる。
かき氷をしゃばしゃばさせているギャルが。
「神ちゃん、せっかくのかき氷、溶かすのですか?」
「だってー頭痛くなるんだもん」
わかるー。一気に氷を流し込むと頭に響くよねー。
しかし悪魔は首を振る。
「何を言っているんですか?それこそかき氷の醍醐味、グイっといくのです、グイっと!」
後ろでそそのかされた狐とモグラが頭を押さえている。
「いーや!今日は相談に来たんだから」
神ちゃんは首を振ってスプーンを咥える。
「最近、やっぎーが冷たいのよねぇ」
おう、こちらが相談に乗るのか乗らないのかの選択すら与えぬワガママ娘め。
(私には手に負えなかった、すまん)
脳内に天使の声!?
「ヤギさんが冷たい?ケンカでもしたです?」
悪魔は神ちゃんのペースに慣れているのか頭をキーンさせながら尋ねる。
聞く気あるんか。
「なんかねー。最近話しかけても返事してくれないし。一緒にご飯も食べてくれないの」
ふむ。
あのなんのかんの人を邪険にしない羊にしては珍しい。
「もう3日になるから私がなにかしちゃったかなぁって」
泣き出しそうな神ちゃん。
必死に堪えていたものが、ここに来て溢れてしまったのだろう。
「神殿、神殿。ヤギ殿に脈はありますか?」
狐が頭の痛みから解放されたのか近寄りながら神ちゃんに尋ねる。
「一緒に暮らしているのに脈無いわけないでしょぉ?」
ぷち号泣。そう言えばこの子癇癪持ちだった。
そんな神、嫌かも知れない。
「そういう意味ではなく。えっと心臓は動いていますか?」
はい???
「……あっ!」
あっ!じゃないんだよ!
「冷たいと聞いて、もちかして体温が低いのでは?と思ったのです」
胸を反らす狐ちゃん。なんでそんな余裕なの?
「ヤギさん、今出張中ですかー。熱湯かけて3分で戻るかとー」
即席麺かなにかなの?そう言えば悪魔も幽体離脱してた時あったな!?
「試してくる!ありがと!」
言うが早い、神ちゃんは飛び出して行く。
「……羊、死んでない?」
「かも知れませんが。まだ生きてるんじゃないですか?」
悪魔は頭を押さえながら答えるのだった。
その晩、羊が菓子折りを持ってきた。
あと2日で完全にお亡くなりだったらしい。
危なかった!!!




