悪魔がウチにおりまして・279
暑い日が続いている。
「ニンゲン、この世界は地獄なのですか?」
悪魔が畳にへばりつきながら尋ねる。
「あんた地獄に遊びに行ったでしょうに」
「そうでした。地獄より暑いです」
最近日本の夏はアフリカより暑いとか話題になったけど、まさかの地獄越え。
実際部屋の中はクーラーのおかげでなんとかなってるけど、直射日光を浴びる野外は確かに地獄以外表現のしようがないのだ。
「おや、みんなが溶けてる」
畳から生えてきたモグラが皆の累々を見て珍しそうにしている。
そういう私もモグラを見つめてしまう。
「それ、なに?」
モグラの頭の上には麦わら帽子。ただし少しばかり歪んでる。
「……ニンゲンの世界には麦わら帽子も無いのですね」
違うよ!?
ニンゲンの不名誉を返上せねば。
「帽子は知ってます。なんでそんな形が悪いのかぶってるのよ」
「……ボクは編み物苦手なんです」
……あっ。
「ニンゲン!ぽんちゃんのこといじめるですか!?」
まさかのモグラ手作り。
しかも不器用を気にしていると来たものだ。
「いーけないだ、いけないんだ!さーたんさまに言ってやろ!」
悪魔もここぞとばかりに煽ってくるし。
「味があって良いと思うよ、うん」
「素直にヘタと言われたほうが気が楽です。とりあえずミミちゃんは後でシバきます」
「なんで!?」
悪魔、もらい事故。
いや、自爆か。
そんな様子を見ていたクモがするする降りてくる。
「ふむ?麦わらならウチにたくさんありますが」
なにやらクモと話した後モグラは再び畳に潜っていった。
「悪魔ー、人の気にしてること楽しんだら怒られるよー」
「は、反省文、何枚書けばいいのでしょう……」
原稿用紙を持ち出した悪魔。
悪行に慣れているのも考えようだなぁ。
「ところでクモ、何をやる気?」
「持ってきました、麦わらです」
モグラは大量の、それこそ大量の麦わらを部屋に持ち込んだ。
「……クモちゃんが作るの教えてくれる?ボク、手がこんなで。ふむ、そこまで言うのなら」
どうやらクモはモグラに麦わら帽子の編み方を教えてあげるようだ。
「ぽ、ぽんちゃん、反省文は何枚……」
「ミミちゃん、うるさい」
悪魔は泣きながらノドを鳴らした。
ほら、邪魔しないのー。
小動物たちが麦わらを編んでいる。
「ニンゲン!できました!」
……こりゃ、悪魔に煽られたらキレるのわかるわぁ。




