悪魔がウチにおりまして・27
ウチには悪魔がいる。
ヘンなモノを引き寄せる、悪魔が。
「そうですか、ごんちゃんはここに住まうのですか」
ひきわり納豆を混ぜながら、羊はうんうんと頷く。
「はい。こちらでお世話になることになりまちた。ヤギ殿、よろちくお願いいたします」
羊に頭を下げる狐。
そうか、悪魔と顔見知りならこいつとも面識あって当然か。
「狐ちゃん、ご飯食べないの?」
「いえ、それがちは修行の身、食事は自分で得よとのもうちつけがございます」
家事手伝いのように仕事をすることはなくなったが、食事は一切手を出さない狐。
さすがに言いつけまで曲げさせるわけにはいかないのでここは任せる。
なんでも干渉しすぎることは良くないのだ。
「しかし、立派になって素敵です。ニンゲンさん、お替り」
そう言いながら空の茶碗を差し出す羊。
こちらの悪魔勢は少しは狐の謙虚さを見習ってほしい。
「自分でやんなさい。さも当然に食べてるけど、悪魔の分からですからね」
その言葉に悪魔がヤギの伸ばした茶碗を止める。
「ヤギさんは既に3杯目です。遠慮という言葉を知らないのですか」
「いえいえ、たまに来れるときくらい、こちらの美味しいご飯を堪能してもバチは当たらないでしょう」
きらりと目を光らせて「悪魔ですからバチは怖くないのですが」とギャグなのかすら判断に困る言葉を口にする。
「それに私はちゃんと土産を持ってきています。物々交換です」
確かに羊は来るたびに何かしら持ってきてくれている。
食卓に並ぶワニ肉は羊持参。
通販でも売っているから、許しましょう。
ウロコを剥ぐのを手伝ってくれたクモに脂の乗った部分をおすそ分け。
器用に切り分けてひと口大にしている姿は本当に行儀がいい。
「そういえば狐ちゃん、なんでこの子かか様に見せたかったの?」
「この方は仏門に帰依されておりますゆえ、お取り引き先なのです」
んん!?仏門って、仏ってことで合ってる?
「クモさん、すごいんですねー」
のほほんと納豆巻きを口に運ぶ悪魔。
アンタ知らんかったんか。
クモは頭に抱えて…恥ずかしがっている?
「それがちよりも徳を積まれているご様子ですので、学ばせていただきます」
クモに平伏する狐。シュールである。
周囲の動物を見回す。悪魔、悪魔、仏のクモに、社の狐…。
ここに天使も居れば完璧…、うん、よく来るわ。
ウチには悪魔がいる。
むしろここまで増えたら、種族コンプリートしたくなるきっかけを作った、悪魔が。




