悪魔がウチにおりまして・264
ウチには引き続きお姉がいる。
家事能力の高いお姉が。
「メノは良いから座っててー」
お姉が来てからというもの、家事はお姉がすべて行なってくれている。
炊事洗濯家事オヤジ。
さすが独り暮らしの長いだけあって生活力が高い。
「ニンゲン、あなたも独り身ですよ」
シャラップです。
言い方が悪い子にはスリッパを差しましょう。
一回でダブルスリッパを食らった悪魔は納得のいかない表情で両手を伸ばしている。
実は悪魔、角には手が届かぬのだよ。
「あら、新しいファッション?似合うわねー」
スリッパクマを見て微笑むお姉。
穏やかな日常です。
「ニンゲンさん、良いんですか?」
ちゃぶ台で冷やし茶漬けをすすっている牛が声をかけてくる。
「何のこと?」
「執行者がバトルだけでなく、家事も完璧。そうなってくると日常でのキャラ立ちもしっかりしているでしょう。つまりニンゲンさん、あなたの立ち位置が危ぶまれて」
「どうでもいい」
小説じゃあるまいし、そんなこと気にするわけわけないでしょう。
「あら、あっさりしてます。このお茶漬けみたいに」
にやりと微笑んでいますが、つまらないからね?
「牛もプライドないの?一応敵対関係の組織から上げ膳据え膳して貰って」
「ニンゲンさん、ちゃんとお茶碗を受け取り、シンクに入れているので上げも据えも自分でやってます」
揚げ足を取るんじゃないよ。
「そんなことよりボクが心配しているのは別のことです」
お茶漬けを平らげた牛が目を細めて視線を流してくる。
「別のこと?」
牛は大きく頷く。
「左様。ニンゲンさんは気付いていないのですか?」
仰々しく言うと牛はすっとあるものをちゃぶ台の下から滑らせてくる。
こ、これは……!
「ニンゲンさん、目を背けてはいけません。現実と向き合わないと」
「あんた、悪魔だったのね!」
「今さらじゃないです?」
ニヤリと口を歪める牛。
く……!逃げられない!
「さぁ、ちゃんと確認することが自分のためですよ!」
ちゃぶ台の下に手を伸ばす。
牛が滑らせた、体重計の電源を入れて身体を委ねた。
!!!
「お姉、明日から家事半分やるから」
「なんでー?」
「いいから!」




