悪魔がウチにおりまして・261
空き地に羊がいる。
アイスをはむはむしながら仁王立ちである。
「ミミ君!苦戦しているようですねぇ!」
目で追えない何かと戦っている悪魔と牛。
そんな切羽詰まった状況の悪魔たちに羊は話しかけるもふたりは無視である。
正確には反応している余裕がないとも言えるのだが。
「まったく!年長者が話しかけたら返事くらいするものですよ」
「羊さん、冗談は後で良いです?」
牛がふっとばされて転がりながら羊に悪態を吐く。
普段「ヤギ」呼びにも関わらず羊と呼んでいるあたり結構ブチ切れている模様です。
「兎田さんも居ながら手こずっているなんて。なまったんじゃないですか?」
「余計なお世話です。彗星龍なんて、こっちの世界でお目にかかるなんて思わないじゃないですか」
じろりと牛が睨みつけるが、羊はアイスの棒を凝視している。
「見てください!初めて当たりました!」
思わず背中を蹴ってしまう。
「な、なにをするんです!?」
状況を考えなさい。アイスなんてどうでも良いでしょうに。
「ニンゲンさんはわかってません!買っても100円のアイスが当たることこそ意味が……」
「みぎゃー!」
力説している羊に悪魔がすっ飛ばされてくる。
「殲滅対象追加」
黒い龍がこちらを睨んでくる。
え、死んだ。絶対死んだ。
「ヤギさん!わざわざ顔出して来たなら手伝うです!」
悪魔は鼻血を出しながら憤慨している。
どうにも締まらない悪魔だ。
羊は空き地の土に当たり棒を使って線をガリガリと引いていく。
「ここから先に来ないでくださいね」
「ちょ、羊。ひとりでなんて」
悪魔と牛をおいてひとり前に進んでいく。
「ニンゲンさん、もっと下がって」
「ヤギさん、やっと本気ですー」
ぼろぼろの2匹は胸を撫で下ろす。
「……殲滅対象増大。エラー、エラー」
羊はいつの間にか黒い龍の前に立っていた。
「ここで何かするのなら、先に書類で申請を。どうせ見てるんです、壊しますね」
言うが早い、羊は龍の頭を掴むと持ち上げた。
翼を羽ばたき飛び立とうとするも、ピクリとも動かない。
「今度はあなた方、本人がいらっしゃい。この差を見て、来る覚悟があるのであればですが」
ぐしゃりと言う音を立てて龍の頭を握りつぶした。
生命だと思っていた者の中身からコードやら、歯車やらがこぼれる。
「ふぅ、アイスが当たって無ければ最悪の日でした」
……えっと?
羊さん、こんなに強かったの?




