悪魔がウチにおりまして・260
道路で悪魔と龍がぶつかっている。
そこそこシャレになりません。
「ここでは迷惑ですー」
悪魔の腕が盛り上がり、龍にこぶしをめり込ませる。
「牛さん!」
「ですね」
牛はのんびりとした口調で少しだけ浮かんだ龍を蹴り飛ばす。
「重いですね。ミミさん、追撃」
どうやら周囲になにも無いところに飛ばすつもりらしい。
「あの2匹、ちゃんと考えてる。偉い、偉い」
お姉は胸を撫で下ろしている。
「追わなくていいの?」
その言葉にお姉は目を丸くする。
「はぁ?メノ、見てた?私たちにできることなんて何もないって」
先ほどまで悪魔が押し付けられていた地面はべっこりと凹んでいる。
深さは腰までを越えるだろう。
「いーい?あの龍が悪魔倒すためにアンタを人質に取らないとも限らない。そんな場所にのこのこ顔出したら邪魔にしかならないよ」
お姉の言うことは正しい。
でも。
「それで悪魔がやられたら?」
震える声を絞り出してまっすぐお姉を見る。
なぜか、視界が歪んでいるけど気にしている場合じゃない。
「おや?こんなところに大穴が?」
ダレよ、こんな時に間の抜けたこと言うのは。
「みぎゃー!?」
ヤバいです。この龍、めっちゃ強いのです。
ニンゲンの手前、余裕なフリしてましたけど、実は落ちてくるのを受け止めた時に左腕が折れてます。
牛さんもシレっとした顔してますが蹴ったときにヒヅメが砕けているのでしょう、足をかばいながら戦っています。
「ミミさん、こんな化け物に恨み買うなんて大物ですねぇ」
そういう冗談は生き残ってから言って欲しいものです。
「殲滅対象追加」
どうやら牛さんも逃げられなくなったようです。
「ホント、貧乏くじなんですけど。ミミさんひとりでどうにかできません?」
「今さら無理なのですー」
雷を纏って狙いを定めても、相手が早すぎます。
間違って牛さんをステーキにしかねません。
牛さんは足をケガしてしまっているのでこのまま囮になってもらうのがベターですね。
「聞こえてますよ。後でご飯奢らせます」
『後で』なんてわざわざ言うあたり、牛さんもやばいみたいです。
フラグ立てるの勘弁してほしいです。
「苦戦してますね!おふたり!」
見てる余裕なんかないです。
ですが視界の端っこに見えちゃいました。
「はっ倒していいですか」
そこにはヤギさんがいます。
アイスなんか食ってるんじゃないです!




