悪魔がウチにおりまして・259
殲滅対象確認。
目標座標、地球。
悪魔と散歩の最中、悪魔が空を見上げている。
「悪魔、どうしたの?」
あまりにも急に立ち止まり、なんなら地雷子から悪魔に戻って街中に立っているので首を傾げてしまう。
「ニンゲン、あと5歩下がってくださいー」
5歩?なんででしょう。
いち、にー、さん、しー、ご。
下がった瞬間悪魔のいたところに何かが落ちてきた。
走る衝撃、舞い上がる土煙。
音が遅れて聞こえてきたこと考えるとどれだけの速度で落ちてきたのだろうか。
土煙が晴れてくるとくぼんだ地面の上に何かを抱えた悪魔の姿。
頭の上に抱えるようにしているのは小型のドラゴンに見えた。
黒い身体、一対の翼。大きさは悪魔と同じくらいだろうか。
こんなファンタジーな生き物いちゃいけないでしょうよ。
「殲滅対象、目視」
「何者ですー?こんないきなり突撃される心当たり、無いんですがー」
腑抜けた口調であるものの、悪魔がわざわざ私を下がらせたことを考えると、シャレになっていないのだろう。
「メノ、とんでも無いモノ来たわねぇ」
後ろに立ったお姉に話しかけられたが、目の前の光景から目を外せない。
「今のところあの悪魔が目的みたいだけど。どうする?エサにしてお帰りいただく?」
「ニンゲン姉!冗談じゃないのですー!」
悪魔からのガチクレーム。
「殲滅実行」
悪魔の抱えているドラゴンは翼を大きく羽ばたかせると悪魔を地面に押し付ける。
更に地面をへこませる。
アスファルトよ!?
「まっずいわねぇ」
やっぱり!?
「まっずいですねぇ」
牛、コーラ飲みながら言うのやめて!?
「彗星龍の標的になるとは。ミミさん、なにしたんですー?」
「知りません!てか助けろですー!」
割とシャレになってないご様子ですよ!?
「執行者さん、どうします?」
「どうするもこうするも、無理でしょ、あの規模じゃ」
お姉が汗を流して口元を歪める。
え、本気でヤバいの?
「まぁ、こっちの世界と規模感が違いますから。執行者さんも下がったほうが」
牛が真顔でお姉を下がらせる。
ウチには悪魔がいる。
怪獣戦争真っただ中の悪魔が。




