悪魔がウチにおりまして・258
ウチには悪魔がいる。
縛っていることをすっかり忘れられていた悪魔が。
まぁ、忘れたのは私なのですが。
失敗したのはあまりにうるさいから口も塞いでしまったことが問題でした。
口を塞いだ、つまり声が出せず飲み物も飲めない。
この季節一晩飲み物飲めなかったのです。
朝に悪魔が干からびておりました。
「悪魔ー!?」
キッチンに転がる悪魔ジャーキー。
糸で縛られているからチャーシューのほうがいいか。
そんなこと考えている場合じゃない!
「宿主殿、いかがなさい……ミミ殿ー!?」
起き抜けの狐も乾いた悪魔を見て叫び声をあげる。
「誰が、誰がミミ殿を!?」
すまん、私。
そうは言っても1日しか放置してないのにこんなに乾く?
「そうですね、1日でこんなに干からびるなんて考えられません」
狐は虫眼鏡を取り出して悪魔・干からびを観察する。
おっかなびっくり悪魔に触れるとやはりカラカラに乾いている。
「宿主殿、さすがにあなたのせいとは言い切れません」
狐、そう言いながらジト目を向けるはやめなさい。
「ここまで乾くのはなにか別の力が働いたはず。これは、ミミ殿を狙った襲撃……!」
「あれ、ごんちゃんどうしました?」
狐が力こぶを作っていると悪魔が玄関から入ってくる。
……コレ、なによ。
私と狐の目が丸くなっているのを見て悪魔は納得の表情。
「あぁ、昨日縛られて抜け出せなくて。ちょっと待ってください」
玄関から入って来た悪魔は縛られた悪魔に近付くと背中からにゅるっと中に入る。
ナンデスカ、ソレハ。
「むぐー!むぐ!?」
乾いていた悪魔がみるみる戻り、いつもの通りに。
しかし口を塞がれているので何も言葉を出せずにいた。
口を自由にしてあげると、悪魔はドヤ顔。
「どうです!?すごいでしょう!?」
「……どうやら仕組みは幽体離脱に近いようですね」
狐は呆れたようにつぶやいた。
「つまり?このまま縛ってても悪魔は自由に動けるし、問題はないってこと?」
「ニンゲン!大ありです!コンビニの人、ボクのこと全く気付いてなかったんですから!」
幽体離脱してコンビニかよ。
「宿主殿、墨を擦りますか?」
「なんでです!?」
ウチには悪魔がいる。
羽根つきよろしく、顔に墨を塗られた悪魔が。




