悪魔がウチにおりまして・256
ウチにはモグラがいる。
キッチンで微動だにしないモグラが。
「ぽーんちゃん、なにしているのですかー?」
悪魔が踏み台の上でまったく動かないモグラに声をかけるが反応がない、ただのモグラのようだ。
横からちらりと見ると目を閉じていた。
まさか、寝ていないよね?
「見えました」
目を閉じてるのに!?
モグラはフライパンを取り出すと、タップリのバターを入れて溶かし、薄く切った食パンを乗せる。
香ばしい匂いと小気味いい音。
「ぽんちゃ、ぽんちゃ!それはいけません、ギルティです!」
悪魔がきゃわきゃわと歓声を上げる。
「まだ作業はあるのです」
モグラはパンをひっくり返した後、真ん中を丸くくり抜いてベーコンを縦にはめ込むと、そこに卵を落とす。
「きゃー!それは!ぽんちゃん農場の!」
「試しに作ったベーコンと、朝採れ卵です」
このモグラの農園、なんでもありだな。
気付いたら上からクモが目を輝かせて覗いてるし。
「できました。パンステーキです」
目玉焼きが綺麗な黄色に染まった頃合い、あらかじめ温めてあったお皿にパンを盛る。
ベーコンの脂身は白く透き通り、パンに付いた焦げ目も上品に。
「さて、ここに取り出しますは」
「ぽ、ぽんちゃん!?まさか!」
モグラはカバンからタヌキのイラストの描かれたトマトケチャップを取り出すと、パンに波かけをする。
「これも試作品……さて、実食です」
モグラは皿を持って踏み台を降りると、部屋の真ん中に座り、ナイフとフォークで上品に食べていく。
悪魔、よだれ拭きなさい。
「ふむ……バターは無塩のほうが良いかもです。ケチャップは少しとろみが足りませんし、何よりベーコンが美味しくない。コレは燻製の時間が……」
モグラはメモを取りながら、ぶつぶつとパンを切り分け黄身をまぶし、ケチャップを掬っていく。
「ぽんたん!ボクの分は!ニンゲンは無くてもボクのは!?」
よーし、今夜ご飯抜きじゃ。
「……?ありませんよ?試作品なんて、ボク以外に食べさせるわけには」
ドゴっという音と共に悪魔が畳に崩れ落ちる。
モグラ、クモ泣いてるけど。
「さて、農場に戻って別の材料を吟味せねば。では」
モグラはそう言うとそそくさと片付けて帰ってしまった。
「がっでぇぇぇっむ!!」
ウチには悪魔がいる。
血の涙を流している悪魔が。
ていうかモグラ、試作品なら自分ちでやんなさい。




