ニンゲンかんさつにっき
今は夜の2時、丑三つ時というやつです。
なんで夜中に牛さんが関係あるのかはわかりません。
ニンゲン族というものは面白いのです。
こっそり押入れの襖を開けるとニンゲンが眠っています。
タオルケットを蹴り上げて、おへそを出しているのです。
ボクがやったら多分風邪をひいてしまうでしょう。
ニンゲンは強いのです。
いけない、ニンゲンが眠っているうちにやりたいことがあったのでした。
ニンゲンを堕落させる企画書を練らなければ。
タブレットを開いてアプリを……。
「あっ」
大音量のヨーデルか流れ出しました。
誰ですか、昼間ヨーデルなんか聞いていたのは。
ボク以外タブレットを開けないというのに悪用されたのです。
ニンゲンは……起きてません。
ねぼすけで助かりました。
「……ミミ殿、お静かに」
押入れの下の段からごんちゃんの声がします。
ニンゲンと違ってごんちゃんは耳が良いのです。
「ごめんなさいなのですー」
暗いはずなのにごんちゃんの目だけ輝いて浮かび上がっています。
怖いです、ごめんです。
ごんちゃんの目が見えなくなったのでタブレットを開いて極秘アプリを開きます。
本社に報告書を送るアプリなので誰にも見せちゃいけないのです。
インストールの時にニンゲンに手伝ってもらったのは本社にバレてないはずなのです。
通知を入れていないのでどれくらい連絡が溜まっているのか分からりません。
映画を観ているときに通知が来ると場面が隠れてしまうのです。
「うわお」
未読32件、普段の10倍です。
専務、ヤギさん、タンク3号、ヤギさん、ヤギさん、牛さん……。
まずはタンク3号から。
ふむふむ、子どもが生まれたそうです……子ども!?
見なかったことにするのです。
専務からはいつもの業務連絡です。
定型文で返信です。
1番多かったのはヤギさん。
どれどれ。
「ミミ君!神ちゃんが浮気を疑っています!返事が遅かっただけなのに!というか、浮気する暇あると思います!?」
ほとんどこんな感じでした。
ゴミ箱、ゴミ箱……。
ふう、メールチェックは大変な仕事です。
ふわぁ、こんな時間ですか。
明日のために寝ないと……。
あれ、なにか忘れているような。
でも眠いので気にしなくていいですね。




