悪魔がウチにおりまして・251
ウチには悪魔がいる。
基本放置されている悪魔が。
朝起きると、悪魔が庭先で何か騒いでいる。
窓を開けて外の様子を見る。
脳が理解を拒否しているが、問わねばならない。
「何してるの?」
「雨乞いですー」
焚火を起こし、槍を突き上げ、ぐるぐると火の周りを回る様子は確かに私の中の雨乞いと一致する。
ただ、なぜ雨乞い?
「これだけあちいです。雨でも降らさないとやってられません」
地味に口調が崩れているところを見ると、結構熱さにやられているようだ。
ちなみに悪魔状態の行動はなぜか他の人に見えることが無いので火を起こしていても問題ありません。
モグラが焚火で肉を焼いていること以外は。
「モグラ、なにしてるの?」
「タヌキです。どうせ火を焚くのです。そのまま放置するのは愚イズ骨頂です」
モグラの英語力の低さを実感したところで悪魔に視線を移す。
汗をかきかき、槍を振るう。
「悪魔の文化にも雨乞いあるのね」
「ありませんよ?」
羊が後ろから声をかけてくるものだから、目つぶしをしてしまう。
「あ、ごめん」
「私じゃなければ大怪我ですよ!?」
しっかり白刃取りしてくれてよかったです。
「雨乞い、無いの?」
手を引きながら話を戻す。
「あるわけないじゃないですか、そんな原始的な」
無言で悪魔を指さす。
「ミミ君、どこで覚えましたー?」
「ゲームですー。生贄は省略してますー」
うん、いい子。
実質モグラが肉焼いてるから生贄捧げてるようなものだけど。
「焼けました、食べますか」
モグラが骨付き肉に塩と胡椒をぱらりして持ってくる。
朝から焼肉とはヘヴィな……パリパリで美味し。
「良い肉です、奮発しましたね」
「ボクの農場、家畜も増やしました。羊肉です」
このモグラ、人の心が無いのか。
ちらりと羊を見ると、その言葉を聞いてもむしゃむしゃ食べている。
「……私、本物の羊ではないので気にしませんよ?」
そう言えば牛もジャーキー食べてたなぁ。
「今後、ヤギさんの会社にも肉を卸していこうかと。味見して貰えてよかったです」
着々と営業かけていくなぁ。
ウチには悪魔がいる。
「雨!降るが良いー!」
もう諦めたら?




