悪魔がウチにおりまして・25
私は(まだ)異世界に居る。
もう帰りたい。
「あの、かか様?でいいのかな。私人間ですよ?」
「そんな、もう母と認めてくれるなんて…」
目の前に座る5本しっぽの狐に人外判定された文句を言うと、お相手は顔を赤らめまんざらでもない顔。
違う、そうじゃない。
「良いのですよ、うちの子になるというのなら正式な手続きを…」
「なりません。そんなしっぽ、たくさん生やしたくありません」
九尾の狐が日本では妖怪扱いなんだから。
「や、宿主殿?たくさんのちっぽとはどういう意味で…?」
先ほどの言葉を聞いて周囲の狐がざわめいている。
「え?君も2本でしょ?増えていくものってのは初めて知ったけど」
「ほらね?宿主様、普通のニンゲンは私たちのしっぽ、見極められないんですよ」
くすくすと手を添えて上品に笑う5尾狐。更にざわつく狐たち。
え?見えないの?
悪魔とクモは納得の表情でうんうんと頷いている。
「権之助。あなたはこちらの方の住まいに居させていただきなさい。旅に回るよりもよほどいい修行になるでしょう」
「ですが、かか様。ごんは広い世界をみとうございます」
いきなりの無茶ぶりに反論する仔狐。
いいぞ、頑張れ。これ以上居候は増えるな。
「いいですか、権之助。ニンゲンという種の中にこれほど力を持った者が無自覚で社会に溶け込んでいるのです。現世どこに回ろうともなかなか出会える御人では無い。これほど世界を知ることにうってつけの環境を逃す手はありませんよ」
なんだか誉められているのか、貶されているのか分からないけど?
「誉めていますよ、我が子よ」
人の心読むな。てか勝手にこどもにされた!?
「ちょっと待ってください、私はまだ許可したわけでは…」
「おや、もうこんな時間ですね。遅くなってはいけません。もうお帰り。また会いましょう」
こちらの抗議を完全に無視して狐は扇を取り出すと柔らかくふぁさっと振った。
突然突風が巻き起こり、目を閉じる。
…気付いた時にはアパートの前に居た。
スマホの時間を確認すると、家を出てから経っていたのは5分だった。
背筋が寒くなる感覚を覚えると、悪魔、クモ、そして2尾の狐。
「…お世話になります、あね様」
「姉じゃないからね」
ぺこりと頭を下げる狐。
ず、頭痛が…。
頭を押さえていると悪魔が追い打ちをかけてくる。
「ニンゲンは狐だったのですか?」
違います!
ウチには…。
もはや何がいるか、考えるの辞めていい?
あー、クモ。頭撫でないの。




