悪魔がウチにおりまして・246
ウチには悪魔がいる。
今日はその中でも羊のお話です。
「ただいまですー」
「はい、手洗い」
この前から悪魔は帰ってきたら清潔にすることを義務化しました。
ええ、さすがにまたルンルンされるわけにはいきません。
「おう、イエス。あっはっはー」
そんな中羊はなんとなく英語っぽい発音で角電話している。
英語、話せたのね。
「ニンゲン、騙されてはいけません。あの角は翻訳機能もあります。要するにカッコつけです」
そんな見栄の張り方する?
「ミミ君、お黙りなさい。今日の相手は重要なんですから」
それなら職場で話しなさい。
この小動物ばかりの部屋で話してたら静かになんてなるわけないでしょう。
「宿主殿ー、ダイコンこれくらいでよろちいですか?」
狐がダイコンを半分すり下ろしてくれたところで聞いてくる。
「ありがとうー」
今日はおろしそば。たっぷりと使うから助かった。
「ニンゲン、ボクはネギ多めのほうが好きです」
悪魔に長ネギを渡す。
おろしそばにネギは使わないでしょう?自分でやりなさい。
「……ダイコンが必要であれば言ってくれれば良いものを」
モグラがひょっこり顔を出す。
自分のところの野菜を食べてほしくてたまらないようだ。
「ごめんね、ダイコン余ってたから」
「仕方ありません。今度そば粉を持ってきます」
……誰もそばなんか打てないよ?
「おや、今日はおそばですか。良いですね涼しくて」
牛はビール缶を袋に入れて帰って来る。
「こんなことならてんぷらも買ってくるべきでした、今度は連絡ください」
おろしとてんぷら……確かに抗いがたい!
「某、甲殻類あれるぎーにて。お外のてんぷらはちょっと」
あったね、そんなこと。
そっか、タネとか油とか一緒でもダメな感じか。
「わかりました。ボクだけ食べれば問題ないでしょう」
お巡りさん!ここに牛型の悪魔がいます!
「おう、いえー。ぷれじれんと、しーゆー。おろしそばはあっさりいくもの。兎田さん、てんぷらは邪道ですよ」
電話を終えた羊が会話に入ってくる。
時たまこの羊の美学はわから……ん?
「羊、今誰に電話かけてたの?」
羊はぴたりと固まる。
「……友だちだヨ?」
嘘つけ!?
その後いくら聞いても羊は相手を教えてくれませんでした。




