悪魔がウチにおりまして・245
ウチには悪魔がいる。
先日毛を刈ったはずの悪魔が。
「ただいまですー」
悪魔が畳から生えてきた。
帰って来るのは別にいいのだが、毛が元の長さに戻っている。
「悪魔、そんなに早く伸びるの?」
「ふえ?」
私に指摘されるまで気付いていなかったっぽい。
「確かに、伸びてます」
悪魔は自分の身体をぽすぽす触れている。
その度に埃のようなものが舞う。
急に毛が伸びる。
埃が舞う。
最近ジメジメしていた……。
まさか。
「悪魔、先に風呂!」
「ニンゲン、お腹減りました」
「いいから!」
悪魔は文句を言いながら風呂に向かう。
私の予想が正しければ、あの毛の正体は。
「ニンゲンさん、こんばんは。今日は活きのいいスズキが釣れましたのでお裾分けに……どうしました?」
羊がレジャー姿で入ってくる。
頭を抱えている私に不思議そうな顔を向ける。
「悪魔が毛が伸びたの」
「それが?」
そりゃ普通想像付かないよね。
私も信じたくない。
「さっぱりしましたー。あれ?羊さんお魚ですかー?」
案の上、風呂から上がった悪魔は毛が短くなっていた。
「悪魔!即ドライヤーなさい!これから風呂上り毎日!」
私の血相を変えた叫びに口答えすることなく敬礼して脱衣所に向かう。
「短かったですよ?」
「……この時期、毛に見えるものは?」
「そんな、まさか無いですよね?」
「羊、一緒にお風呂見に行こう」
正直ひとりで見るのは怖すぎる。
ドライヤーをかけている悪魔の横をすり抜けて浴室を開ける。
浴室の中にはたくさんの毛……じゃない。
カビが流れず残っていた。
「なんか今日抜け毛がひどかったのですー」
「カビてたのよ!」
ウチには悪魔がいる。
生きながらにしてカビがルンルンしてた悪魔が。




