悪魔がウチにおりまして・238
ウチには悪魔がいる。
少し時間に疎い悪魔が。
「ニンゲン、ここら辺に竹林はないですか?」
悪魔は頭にスリッパを差しながら聞いてきた。
どうした?
「少し歩けばあるけど……」
「ついてきて欲しいのです!ひとりじゃ持てないと思うので!」
スリッパを放り投げると、地雷子ちゃんに変化。
持てない、とは?
やって来ました、近所の竹林。
てか、でか!
「すっごいですね、ニンゲン!」
地雷子ちゃん大興奮。
手にはノコギリとナタ。
刃がむき出し、捕まらなかったことが運が良い。
「ねぇ、まさか竹を持って帰るの?」
「ですです、コレが良いですかねぇ」
手近にあった竹に向かい、ナタを振り上げる。
「待ちなさい!」
悪魔の腕からナタを取り上げるそのまま手だけを振り下ろし、ずっこける。
「ニンゲン、何をするですか」
「この林の持ち主に言わないと泥棒なんだから」
こんなことで警察のご厄介は避けたいものである。
「えー、バレませんよぅ」
「バレるんじゃなぁ」
しれっと混ざるおじいさん。
悪魔の後ろから声をかけ、気付かなかった悪魔はグーパンする。
ナタ取り上げておいてよかった。
しかしじいさん、地雷子ちゃんの拳を受け止める。
「甘いわ、小僧!」
「おじいちゃん、相手女の子」
私のツッコミをスルーして、妙なポーズを極めた。
「儂の目が白いウチはこの竹林、指一本触れさせんわ!」
「おじいちゃん、それ白内障」
なんなのだ、このキャラの濃いじいさん。
「おじいさん、ボクは竹が欲しいのです!一本ください!」
悪魔、そんな今さらな頼み方しても……。
「わかればよい!無断がいけないのじゃ!」
くれたー!?
その後、良い竹を見繕ってもらい、なんなら羊かんまでごちそうになり、竹をいただくのでした。
「ねぇ、悪魔。なんで竹なんか欲しかったの?」
地雷子ちゃんは肩に竹を担ぎながら微笑む。
「だって、願いを吊るせば叶うのでしょう?何を願いますかね」
……はい?
「悪魔、それ来月よ?」
「えっ?」
悪魔は竹を落とす。
未だかつてない、虚無顔を晒しながら。




