悪魔がウチにおりまして・236
ウチには悪魔がいる。
時たま異文化を平気で持ち込む悪魔が。
「ニンゲン、冷蔵庫空けて置いてほしいのです」
悪魔が仕事から帰って来るなり唐突に言ってくる。
空けることは構わない。
しかし、今までのことを考えると問題がある。
「何を入れるか」である。
「別に構わないけど。何買ったの?」
「えっと、魔骨鶏としびれキノコの水煮、あとドロドロです」
……さて、明日の予定を確認しないと。
「ニンゲン!現実逃避すること言ってないのです!」
「するものしか言われてないのです」
あまりのラインナップに口調が移ってしまった。
「どれがわからないと言うのですか!」
悪魔は自信たっぷりに言ってくる。
その自信、廃品回収に出してやろうか。
「前ふたつは不穏しかありません。そしてドロドロってなによ」
万歩譲って前のは鳥とキノコだ。私が食べなければ構わない。
しかし、最後。お前はダメだ。
形状が想像できない。
「ドロドロを知らないのですか?ドロドロですよ?」
オノマトペってあっちにもあることだけわかった。
「そのドロドロがわからないんだってば」
そんな平行線の最中、モグラが生えてくる。
「ドロドロ……ミミちゃん買ったのですか」
「ぽんちゃーむぎゅ」
「モグラ、ドロドロってなに?」
「タヌキです。ドロドロは、、えっと、こっちで言うところのトロロ?魔鈴薯とすり下ろして、ダシで合わせたものです」
トロロならわかる!でも相変わらず不安になる素材の名前!
「大丈夫ですよ、採れるのが魔界だから魔って付いているだけ。トキもニッポン・ニッポンって言うでしょ」
惜しい!でもわかりやすい!
「ちなみに、それ私が食べても平気なの?」
冷蔵庫を貸す以上の当然の権利です。
「ニンゲンにあげるとは言ってないですー」
黙りなさい、居候。
「やめておいた方がいいかと。栄養がこっちの食材とまるで違うので」
モグラは手をひらひらと振った。
「……なんでアンタらはこっちの食べ物平気なの?」
「こっちの食べ物、基本ボクたちには栄養無いので。だから逆に食べてしまうと……」
モグラが一息入れる。
「食べると?」
「めっちゃ太るかと」
うん、食べないわ。
ウチには怪しい食材が届いた。
紫の肉、水色のキノコ、真っ黒なペーストだったので食べる気しませんでした。




