悪魔がウチにおりまして・233
ウチにはブロガーがいる。
ニンゲンのふりをしている悪魔が。
悪魔がタブレットとキーボードを持ち出して何やら打っている。
「悪魔ー。何書いてるの?」
「ブログですー」
ほう、そうかー。
一応、有名ブロガーだもんなー。
「書けましたー。地獄旅行の感想、アップ」
「するな!」
エンターキーを押す寸前、私の手は光より早かった。
ええ、誇張です。
「悪魔、そこに座る」
「ニンゲン、座ってます」
「正座で」
「しびれます」
「正座で」
「あい」
私の圧を感じたのか、正座で座り直す悪魔。
「良いですか。あなたのブログはニンゲンが書いていると思われています」
「たぶん」
「そのニンゲンが地獄に行って帰ってきたと報告したら、世間の人はどう思いますか」
「……楽しんだか?」
「お手付き一回です」
悪魔の角にスリッパを差す。
「ニンゲンは地獄なんかに行きません、楽しみません、下手すると帰って来ません」
悪魔は鏡を出して私の顔を映す。
いい根性だ。
スリッパをもうひとつ差す。
「ニンゲンの振りをするなら、ちゃんと情報は選んでください。ここに住むお約束です」
「あい」
既に9か月も住んでいるケモノとこんな約束をする羽目になるとは。
しかし、今日の悪魔は嫌になるくらい素直だ。
不安になる。
「ねぇ、悪魔。今まであっちの世界のことブログに書いてないよね?」
「今消すので待ってて」
「見せなさい!」
悪魔のタブレットをひったくる。
悪魔の世界のことも、狐の世界のことも書いてある。
なんなら閉じ込められた異空間のことも。
コメントを見る。
そこには、悪魔の「空想」を称賛するコメントが溢れていた。
「……地獄上げていいんじゃない?」
ウチには悪魔がいる。
地獄旅の話がネット記事で軽く取り上げられたのは見なかったことにした。




