悪魔がウチにおりまして・228
地獄巡り、飽きてきてない?
私は飽きている。
「ニンゲン、今日行く地獄は……」
火の車の中、悪魔の言葉を聞き流す。
正直、飽きている。
だって!全部不況でメンテ不足なんだもの!
地獄の方々も亡者の方々も不況過ぎて何する場所か忘れてる!
なんで、釜茹で地獄でゆで卵作ってるのよ!
なんで、賽の河原でピラミッド作ってるのよ!
お客さん呼びたいの分かるよ?
方向性よ、地獄に何求めてるかよ!
ネズミーの国に配管工歩かせるようなものでしょ!
「ニンゲン、ギリギリな想像してません?」
具体名を出してないからセーフです!
「ニンゲンさんの言っていることも分かります。干し草が欲しいのでしょう?」
羊はそう言いながら人をダメにする干し草を差し出してきた。
そんなわけないでしょう!でも、ちょうだい。
草をはむはむしながら外の景色を眺めていると、なにやら元気のなさそうに項垂れる鬼たちがたくさん見えた。
「ぐっさん、少し止められる?」
「それ、可愛くないから断りたいです」
知らんがな。
火の車を止めて、鬼たちが居るところに行ってみる。
「ニンゲンさん、危ないのでついていきますよ」
牛がのそりとついてきた。
「何を気にしたんです?」
「だって、鬼がこんな凹んでるって珍しくない?」
私の鬼のイメージ上こんな風に項垂れたり、川に頭を突っ込んだり、聖書を必死に読んだりしないでしょう。
「まぁ、そうですけど」
「……なんだ、あんたら」
目の死んでいる鬼が私たちを睨んでくる。
気力が無くても鬼は鬼、めっちゃ怖い。
「アンタらじゃ話にならん。酒呑童子はいるか」
え?牛さん?
「家畜さん、大きな顔するとケガするぜ?」
牛の言葉に青筋を立てる鬼たち。
そりゃ部外者ですからねー。
「親分の顔立てて手を出さねぇでいるんだ、三下。さっさと……」
「すまんな、若いのが無礼した」
地響きと共に、5メートルはあろうかという大鬼が顔を出した。
「酒呑、どうしたい。こんなにシマ荒れちまって」
「それを言うな、兄弟。この後一献どうだ?」
「ツレが居るからな。またにするよ」
いつの間にか鬼たちがビシッと立っているし。
「ニンゲンさん、今夜出かけても?」
「……いいんじゃないでしょうか?」
牛さんの、意外な一面を見ました。
怖いです、殴るの控えましょう。




