悪魔がウチにおりまして・224
私たちは地獄に向かっている。
私悪いことしてないもん!
「異議あ「黙りなさい、羊」
「この度は地獄観光ツアーお申込み、誠にありがとうございます。ガイドを務めさせていただきます、お歯黒べったりです。親しみを込めてべっちゃんって呼んでください」
『べっちゃーん!』
お子さまズがせーのでコール。
「ノリのいい呼びかけ、ありがとうございます。今日から2泊3日、よろしくお願いしますー」
やんや、やんやの大騒ぎ。
まぁ乗客が私たちしかいないから迷惑は掛からないけど。
「今回のツアーでは本来、罪人しか入ることのできない地獄を体験していただけるものとなっています」
物騒であるとしか思えないのだけど。
「必ず私の言うことに従ってください。じゃないと戻って来れません、はーと」
はーと!じゃないんだわ。
「ニンゲン、気を付けるんですよー?いつも勝手にどこか行くんですからー」
悪魔がさきいかを頬張りながらたしなめてくる。
こっちのセリフじゃ。
「あの、お歯黒さん?」
……返事がない、ただの妖怪のようだ。
「お歯黒さん、お歯黒さん。……べっちゃん」
「なんでしょう、ニンゲンさま!」
コイツもいい性格してるわ。
「なんで地獄巡りなんてやってるの?」
「いやー。最近ですね、悪人の質がおちまして。中途半端な罪で落ちてくる者が多くて地獄の家計も火の車……。ちなみにその火の車ですが、皆さまが乗っているこのバスになりました」
ご先祖さまが泣きそうな説明、どーも。
「インバウトって言うんでしたっけ?海外からのお金を入れないと。そういう意味で今回のツアーは外の人しかいないからホクホクです」
黒染めの歯をむき出してべっちゃんは笑う。
良い性格してるなぁ。
「安全なんですか?」
「大丈夫です!クレームが来たことはありませんから」
クレーム入れられる状況じゃないと思うのは私だけですか。
「ニンゲンさん、どこに行きたいですか?ボクは血の池泳いでみたいのですが」
牛、ブラッドフォンデュになるけど良いのか。
クモも身体を揺すって何かに期待している。
「クモちゃんはカンダタさんに会いたいって言ってますー」
神経逆撫でする気がするからあまりお勧めしないよ?
「はぁい、皆さまにはまず地獄の裁きを受けてもらいまーす」
『はーい』
朗らかに返事するところじゃないんだよなぁ。




