悪魔がウチにおりまして・221
「ねぇ、メノ。なんかチャーハン臭くない?」
ごめん、悪魔しばいておいて。
唐突にお姉がウチにやってきた。
それは構わないのだが、モグラがじーっとお姉を凝視している。
「この子、会ったことあったっけ?」
お姉が忘れているなら私も知らない。
多分会ってないってことで良いんじゃない?
「初めまして、ぽん吉といいます」
意外と礼儀正しく頭を下げる。
「ぽん吉?」
「あい」
「モグラよね?」
「タヌキです」
お姉は鏡を差し出す。
「タヌキです」
鏡に一瞥をくれるとそのまま私に流してくる。
「タヌキかぁ。メノ、変なのに好かれるわね」
本人目の前に変なの呼ばわりもなかなかだと思いますが。
「ニンゲン大。結構無礼なんですね。さすがニンゲンの姉妹です」
それって私に失礼じゃない?
「ボクは帰ります。変な気配がして見に来ただけなので」
そう言うとモグラは帰っていった。
「あらあら、帰っちゃった」
「お姉。いくら何でも初対面の子にアレは無いんじゃない?」
いくら自分をタヌキと勘違いしている子でも、ああもあしらって良いものじゃ…。
「メノ、あんた感覚狂ってる自覚ある?」
「え?」
「いくら害が無くみえてもあいつらは魔の者。本来ニンゲンを貶めるものだよ?それを受け入れすぎじゃない?」
お姉の言葉に少し胸が痛くなる。
余りにもトンチキなので忘れていたが、こいつらは一応悪魔。
動物園のふれあい農場ではないのだ。
「別に一緒に暮らしていることに文句はない。危害もなさそうだからね。でも、油断してると……」
「あー、ニンゲン姉!どうしたんですかー?」
ばっちりなほどにタイミング悪く悪魔が帰宅。
「美味しいたい焼き見つけたから買ってきたのよー?」
なんですと!?
「ほえ?……まさか、その包み紙は!」
悪魔、包み紙だけでプチ歓喜。
「さすが。そうよ、お目で鯛の十勝あずきよ」
さっきまでの真剣さはどこへやら、お姉はたい焼きを取り出した。
ひーふーみー。たい焼きは7つ、さては。
「増えてるなら言ってよー。あの子の分無いから追い返しちゃったんだから」
それでモグラにあんな失礼な態度取ってたの?
「はふはふ。ぽんちゃん来てたんですか?」
「私の分置いていくから、あの子にあげてね。……メノ、さっきのこと忘れずに」
去り際の一言は、たい焼きの味を分からなくさせるのに……美味し。




