悪魔がゾンビになりまして?・219
ウチには悪魔が……。
「ニンゲン!ゾンビになりたいのです!」
何言ってんの、コイツ。
とりあえず聞き流すとして。
「ニーンーゲーンー。ゾンビになりたいのですー」
空耳じゃなかった。空耳であってほしかった。
「理由を聞きましょう」
「昨日akumazonで映画を観ていたのです」
出た、あくまぞん。
こっちの世界の映画も放映されてるのね。
「ゾンビは強いのです。パラソル社に行けばウイルスがあるはずなのです」
現実と二次元の区別が付かない愚か者よ。
「そもそも映画の中の会社があるわけが……」
「ありますよ、パラソル社。行きますか?」
あるの!?てか羊、いつ湧いた!?
やって来ました、パラソル社。
どうやら元はゲームで、制作会社の名前をそのまま使ったらしい。
「たのもー!ウイルスくださーい!」
エントランスで叫ぶ地雷子。
恥ずかしいったらありゃしません。
「はーい。何味ですかー?」
待ちなさい、お姉さん普通に対応しないで。
「味があるのですか?」
「メロンと、イチゴと、ブルーハワイですね。どれにします?」
お姉さんは3種類の缶を並べる。
ノベルティドリンク?
「あるんですね、そういうの」
「映画公開してからお問い合わせを多数いただきまして。あまりにも熱心なユーザーのご意見を尊重し、社長から制作許可がおりました」
区別が付かないのはこの子だけじゃないのかぁ……。
「ボクはメロンが欲しいですー!」
「それなら私はブルーハワイを。大人ですので」
羊、キリっとええ声出してるけど、それ求めてる時点で子どもだからね。
その時、うぱがおずおずと私の脚を引く。
ちょっと遠慮がちに上目遣いとイチゴ味に視線を交差させる。
「そうしたら、1本ずつください」
うぱは嬉しそうに私の背中に飛びついてきた。
たまにはよかろう。
「ニンゲンもゾンビになるのですね!」
なりません、なれません。
お姉さん、一瞬可哀そうなものを見る目はやめて?
保護者は辛いのですよ?
「お求めありがとうございます。990円です」
たっけぇ。
ウチではウイルス蔓延している。
「ゾンビにならないですねぇ」
なってたまるか。




