悪魔がウチにおりまして・215
ウチは動物園のようである。
人語を解する動物ばかりですが。
悪魔、狐、クモお出かけ。
家にはうぱと羊のみ。
なんなのだ、このメンバーは。
「ニンゲンさん。この子最近の様子は如何ですが?」
うぱに毛を引っ張られながら尋ねてくる羊。
引っ張るたびに毛が抜けているのは別にいいのだろうか。
「如何もなにも、そんな感じよ?」
引っ張っては抜ける毛に楽しそうな様子でじゃれついている。
「そうですか。この子、ここに居てもいいのでしょうか」
ずいぶんと前に親元に戻る機会を止めて、ウチに引っ張って来てからというもの、この子は特に何をするわけでも無くウチでふわふわしているだけだった。
「つまり、いつも毛を抜いていると」
ごめん、それは今のアンタだけ。
「私は思うのです。この子はまだ小さい。親元から離れて暮らすことが本当のしあわせなのかということを」
羊が腕を組んで真面目な顔をしている。
「いくら本人が居たいと言っても親と離れていては本来の環境の常識を知らず成長してしまう。それは本当に正しいのか」
おおう、羊がめっちゃ真面目なことを言っておる。
「定期的に帰ってきてるから平気ですよ」
「そうは言いましてもね」
「ごめん、今私なにも言ってない」
1人分増えている声の主を探ってキョロキョロすると、羊のすぐ後ろにうぱパパが立っていた。
久しぶり過ぎるでしょ。
「どうも、パパです」
「……いきなりはやめてください。心臓に悪いです」
「見た目の通り心臓に毛の生えている悪魔が?冗談でしょう」
おお、何気辛らつだぞ?
「前振りなく出てくるの、確かに心臓に悪いですよ?」
「これは失礼。少し寂しくなってしまって」
一度しか会ってないのを承知で、絶対にそんな理由ではない。
ついふらっと来れるような身分では……逆か。
ある意味オールオーケーの立場な気がします。
うぱは尻尾を振ってパパに抱き着いている。
「あはは、大きくなったねー。ほら、高い高ーい」
爬虫類と大の大人が戯れている様子は微笑ましさからは程遠い。
「ところで、こんなふらっと来てお仕事は?しわ寄せ来るので自重していただきたく」
羊も皮肉を返している。コイツ、怖いもの無しか。
「大丈夫!ちゃんと有休取った!」
パパとうぱがサムズアップ。
似た者親子なんだなぁ。
「ところで我が子、いつ帰省するの?」
……違いますけど!?
私には謎の親が増えていく。
全て自称なのは勘弁してもらいたい。




