悪魔がウチにおりまして・212
ウチには悪魔がいる。
食い意地の張っている悪魔が。
「ニンゲン!お米の量が少ないのです!」
悪魔が珍しくご飯を作っていると、米びつを持って文句を言っている。
「ほら!もう2合もありません!こんなになんで減ってるんですか!」
アンタが大飯食らいだからでしょ!と言いたいところだけど、確かに先週15キロ買ったのにもうそれだけしかないのは確かにおかしい。
「最近、一回の食事で7合炊いているけど、減りが早いよね」
「……7合も炊いていたんですか?」
目を丸くする悪魔。
アンタ自分が3合食べてること忘れてない?
「私たちは1合も炊けば足りるの」
「それにしてもなんでこんなに」
露骨に目を逸らしている悪魔だが、食費がウチの家計を直撃している以上、原因は突き止めなければならない。
「お困りですか」
牛が顔を出し、頭には帽子、口にはパイプ。
ハードボイルドファッションに身を包んでいるということは、自分で犯人調べたいってことで良いの?
「水臭い。お困りならばこの私の4つの胃に頼ってくれても良いものを」
事件解決に全く役に立たない物を自慢されましても。
「牛さん、お米がたくさん無くなっているのです。変なのです」
「伺いましょう」
悪魔と牛はいろいろ話し合っている。
クモが降りてきて首を傾げた。
「クモ、お米食べてないよね」
もちろんのようにこくりと頷いた。
この子が勝手に食事を食べている光景など想像できない。
一番勝手に食ってそうなヤツが今一番騒いでいますし。
「なんか理不尽なこと考えてるヒトがいる気がします」
「気のせいだよー」
勘のいい悪魔は嫌いだよ。
「で、結論出たのー?」
牛は申し訳なさそうな顔をしている。
「えーっと……非常に申しあげにくいのですが。すべて正式に食べてます」
はい?15キロですよ?
「1合は150グラム。10合で1.5キロです。1日最低14合炊いていて1週間。98合。残り2合でぴったりなんです」
一同、目が点。
「おやおや、皆さん固まってどうしたのですか?」
「これからご飯減らします!」
「やぎー!?」
相変わらずいいタイミングで入ってくる羊であった。
このために1合計りました。




