悪魔がウチにおりまして・211
今、のんびりとお酒を飲んでいる。
悪魔は隣に座っている。
ゴールデンウィークも終わり、仕事に戻った。
長い休みの後は仕事が溜まっているもので、片付けていたら少し遅くなってしまった。
「ニンゲン、遅かったですね。先に頂いてます」
ウチに帰ると、悪魔がひとりでご飯を食べていた。
「あれ、みんなは?」
「えっとー。クモちゃんは免許更新で、ごんちゃんはこの前の修行の認定証貰いに。ヤギさんは神ちゃんとでかけて、牛さんはわかりません」
最後だけ雑じゃなかった?
まぁいいか。この子と2人の晩御飯。
なんだか久しぶりな気がする。
「ニンゲン、腐り豆の残りがありません。今度買っておいてください」
「いい加減、納豆と覚えなさい」
悪魔は首を傾げながら納豆をねりねりするのだった。
晩御飯も終わり。
縁側に出ると、月が綺麗である。
「ニンゲン、飲みます?」
私が座っていると、悪魔が缶ビールを2本持ってやってきた。
「ありがと。月見って秋だけだと思ってたけどね」
「ニンゲンは不思議なことを言います。月はいつでもあるのに」
ふたりで月を見ながらビールを傾ける。
「あんたってこっちにいて不便じゃないの?」
気になって尋ねると悪魔はぐびりとビールを飲む。
「なんでです?」
「ほら、結構距離あるし」
悪魔は一応あっちで働いてるわけだし。
「んー。確かに時間かかりますが。慣れれば平気、住めば都です」
そっか。
意外と気に入ってるのか。
そのままのんびりとビールを飲む。
ひとつ、ふたつと缶が増える。
取り留めない、今までの思い出と肴に酒は進む。
「ニンゲン」
「なぁに、悪魔」
そこから無言になる。
ただ月が綺麗。
それでいいじゃないか。




