悪魔がウチにおりまして・208
修行がまだ続いている。
ほらー。さっさと終わらせるよー。
「ほっほっほ、ぬるい、ぬるいですよおふたり!」
羊が高笑いをあげている。
目の前には膝を着いた悪魔と狐。
「く……まさか、あなたが!」
悪魔は口から垂れた赤い液体を拭う。
ちなみにさっき仕込んだケチャップです。
「ミミ殿、某たちの力では敵いません……引きましょう」
狐は間違えてバジルソースをしっぽに塗っている。
おーい、妖怪みたいになってるぞー。
「未熟!未熟ですね!」
羊、どこからか持ってきたマントを翻し、両手を広げる。
「姐さん、柏餅食べます?」
ザリガニも飽きているのか、私に和菓子を振舞う。
そうか、今日は子どもの日でしたか。
「ごんちゃん、アレをやるしかないようです!」
「ミミ殿、アレをですか!?でも、ふたりの命が危険に……」
「このままではあの魔神ヤーギにやられてしまいますー!」
「ふっふっふ!今さら何をしたところで怖くないですよ!」
なんか楽しそうだなー。
あ、ほうじ茶おいし。
「丹精込めて煎れた甲斐がありました」
ネズミが竹筒に入れたほうじ茶を注いでくれる。
かたじけない。
「ごんちゃん!今こそ必殺の合体技です!」
「ええい、仕方ありません!」
そういうと悪魔の上に狐が肩車。
そのまま悪魔が走り飛んで、羊に飛び蹴りを食らわせる。
合体の意味、絶対にない。
「お、おのれ!かくなる上は……あ、おふたりあと2歩下がって。貴様らも道連れにしてやるぅ!」
悪魔の飛び蹴りを食らった羊はご丁寧にも2匹を安全地帯まで下がらせた後、何やらボタンを押した。
どっかーん!とふざけた音をさせながら羊が吹っ飛んだ。
え、大丈夫なの?
「……ごんちゃん、やりました!魔神ひつじんを倒したのです!」
相変わらず自分の付けた名前に責任を持たない悪魔め。
「……そ、そうですね!これで世界に平和が戻ります!」
付き合ってあげる狐、優しいねー。
『ふたりの勇者の活躍で世界に平和が訪れた。勇者・ミミ。賢者権之助、その名前は未来永劫語り継がれ』
「ボク!賢者がいいのです!賢いの、かっこいいのです!」
「某のほうがテストの点は良いはず!なので賢者は譲りません!」
ちょっと焦げてる羊のナレーションの最中に文句を言い始める小動物たち。
「ねぇ、この修行、デキレ?」
「姐さん、シナリオのほうが聞こえいいっすよ」
どっちでもええわ。




