悪魔がウチにおりまして・206
ウチらは団子を食んでいる。
狐ちゃーん、もう帰るよー?
「無理ですー!なんでボクまでー!」
現在狐&悪魔は高く吊るされた糸を上っている。
「ミミ殿!いけます!まっすぐ上るだけです!」
「おかしいです!ボク関係ないですー!」
珍しく悪魔に同意。
狐の修行に巻き込まれる悪魔も災難だが、日ごろの行いが悪いってことでここはひとつ。
「ここまでやれって言われてないんですけどね」
ザリガニは頭を掻きながら2匹の宙づりケモノを見上げている。
「しかし、こんな長い糸、よく用意できたわね」
既に悪魔が小さくなっているのに、まだ上っているんだもの。
長さは相当のはず。
「なんか主さまが用立ててくれまして。なんでも仏の加護があります、とかなんとか」
ん?ウチのロフトに住んでる8ツ脚のイメージがよぎったんだけど間違いない?
さぽーてっどばい、クモ。
「下ろしてー!」
「ミミ殿!もう少ちでてっぺん!ミカンはすぐそばです!」
そっかぁ、ミカンのためにクライムしてたのかぁ。
あ、草餅おいし。
「姐さん、相変わらず神経太いっすねぇ。普通心配で食べ物ノド通らないんじゃないです?」
「だって、悪魔でしょ?心配しても、するだけそ」
損と言いかけた時に悪魔が落ちてきた。
降りて、じゃなく落ちて。
「あ、悪魔ー!?」
地面にはしっかり悪魔形の穴が開いて、めり込んでいる。
「ミミ殿ー!?ご無事ですかー!?」
狐が口にミカンを咥えてしゅるしゅると降りてきた。
「み、ミミ殿……。優ちい、方でちた……」
えぐえぐ泣いている狐。
「死んでないのです!勝手に殺すなです!」
普通あの高さから落ちたら死ぬんだって。
「もう怒ったのです!次の修行は何ですか!全部ぶっ潰してやるです!」
手にミカン、全身を震わせ雷を纏ってブチ切れモードの悪魔。
普通、帰るんだけどね?
「もーやめときません?さすがに片付け面倒ですし」
本音隠しなさい、甲殻類。
「いいえ!次の修行で最後のはず!いざ、いざ!」
ミカンをむきむきしながら狐のやる気は最高潮。
その姿をみて、ザリガニはため息を溢した。
「仕方ないですねぇ、最後の修行行っときますか」
ザリガニは歩く。
そこには薄暗い洞穴があるのだった。
ねぇ、帰っていい?
「じぇの!さーいど!」
あー、悪魔のテンション的に無理ですな。




