悪魔がウチにおりまして・205
やって来ました、狐界。
本来、簡単に来てはいけない気もしてる。
「ごんちゃんままー。お久しぶりですー!」
「おや、よく来ました。我が仔も久しいですね」
相変わらず、私を自分の子どもにしようとする白狐。
「かか様!修行とはどのようなことをなさるのでしょう!」
目にやる気の炎を燃やし、狐はお行儀よく座っている。
でも、しっぽの振り方が尋常じゃないので相当興奮しているのはまるわかりだけどね。
「権之助、落ち着きなさい。そのように盛んになるのもよいですが、今はその血気を鎮める修行です」
鎮める修行?嫌な予感がしてきたぞ?
「……なんでオレが見張りなんですか?」
ザリガニがため息を吐きながら滝に打たれる狐を眺める。
「私に聞かれても」
「ぼ、ボクはやらなくていいのです!助けるのです!」
狐の隣で泡食ってるのはもちろん悪魔。
なぜか狐の隣で滝に打たれている。
「逃げればー?」
そんなに嫌ならさっさと動けばよろしいに。
「足が固まっているのです!動けないのですー!」
合掌。
悪魔に手を合わせているとザリガニの隣に品の良さそうなネズミが歩いてくる。
「この修行は、二対一心と言いまして。新たな境地にたどり着くためには最適なのですよ」
あの、どちらさま?
「お花、なぜここに?」
「あなたさま、今日のお弁当をお忘れですよ。今日はハマグリの佃煮を具にしてみました。お口に合うとよいのですが」
「それはすまなかった。ハマグリか、美味しくいただくよ」
「あの、つかぬことお聞きしますが。コレが言ってた奥さん?」
ネズミは頬に手を添えながら朱に染める。
照れてる、可愛い。
「ええ、花と言います。オレの家内です」
本当にザリガニとネズミの夫婦……。
種族の壁2つ3つ越えてるけど平気?
「花でございます。今後ともよろしくお願いします」
三つ指を着いてお辞儀をするお花さん。
私、よろしくされても仕方ない気がしますが。
「ニ、ニンゲン!替わるのです!冷たいのです!」
「ミミ殿!もっと目立ちたくはないのですか!最近兎田殿のほうが大きい顔をちていると愚痴っていたではないですか!」
それ、物理的サイズさ。
なんなら羊もでしょ。
「ごんちゃん、言ってはダメなのです!ボクは影が薄くてもいいのですー!」
悪魔も気にしていたのね……。
滝を見ながら水見酒。
このお花さん、なかなかいい根性してるかも。
「楽しむなですー!」




