悪魔がウチにおりまして・201
ウチには……。
う、牛ー!?
「に、ニンゲンさん、冷たい水をください、できたら愛してください……」
部屋に入るとぶっ倒れていた牛だが、余裕そうなので放置しようかと思っていると、床につっぷして動かない。
「牛?どうしたの?」
「過労です。割と真面目に」
牛曰く。
この時期……ゴールデンウィーク前には所謂小鬼のようなものが増えるらしい。
で、それをしつけや討伐する仕事を担当しているのだが、例年に比べて今年は数が多いそうだ。
「まるでたんぽぽの綿毛のように湧いては増え、湧いては増え。すでに留置場も満室です」
そんなに小鬼が多いのかー。
「他に小鬼捕まえる担当、いないの?」
「どこの世界も人手が。去年までは30体に1担当居たんですが、経費削減と今年の大量発生のせいで90体に1の計算に」
なんか、カエルの時も同じようなことなってなかったっけ。
「ノルマこなしたら解放されると思って、最初張り切り過ぎました。すでに210体捕まえても解放されません。理不尽です」
牛、思っている以上に優秀なのね。
「小鬼の特性を知っているだけです。ザリガニ釣るのとかわりません。奴ら群れてますし」
「牛さーん、ここに居たんですねー」
悪魔がひょっこり畳から顔を出した。
牛は悪魔を見ると這って逃げようとする。
その様を見る限り、本当に疲れているんだなぁ。
「専務が呼んでましたー。火山地区に小鬼の巣が見つかりましたー。牛さん、派遣ですー」
「私、もう今日15体……」
「さー、お仕事ですー」
悪魔は牛の脚を引っ張り畳に引きずり込んでいく。
まるでホラー映画の一幕のように徐々に畳に飲み込まれていく牛。
ヒヅメを立てないところを見ると余裕はあるようで安心です。
「この恨み、忘れぬ……。今夜のおかずにかつ丼が出なければ末代まで呪うでしょう」
「はいはい、ロース?ヒレ?」
「ヒレで。最近脂身が苦手に……」
そこまで言うと畳に吸い込まれていった。
さて、この時間なら割引カツがあるでしょう。
今夜の晩御飯はかつ丼です。
「ニンゲンさん、いつもすみません」
黒こげの牛はそっと空のどんぶりを差し出す。
カツ、多めに買っておいてよかったよ。




