悪魔がウチにおりまして・198
皆でお泊り会です。
寝る場所無いから雑魚寝です。
今後ウチではなく狐ビルで会議をすることにしよう。
そんなことを考えていると軒先に座る陰。
カーテンを開けると、神ちゃんが座って月を見上げていた。
「メノメノ、起きてたの?」
斬新な呼ばれ方したものだ。
「神ちゃん、寒いから入りな?」
「んー。お月さまキレイだから」
キレイで見てる顔してないでしょうに。
缶ビールをふたつ持って隣に座る。
「大丈夫でしょ。狐ちゃんに頼んだのよね」
いくら払ったか知らないが、とりあえず聞きたくありません。
「だよね……ビールありがと」
プルタブを開けて2人で乾杯。
冷静になったが神様と月見酒ってそこそこの経験よな。
「ミミちゃんはいいなぁ。ここに居れて」
ぽつりと神ちゃんがつぶやく。
「こんな好き勝手にできる場所、そんなにないよ。特にこっちの世界では」
「アイツが勝手してるだけだからね。ウチに迷惑かけなきゃ自由でしょ」
私の言葉に首を振る。
「メノメノ、ニンゲンなのに私たちのこと利用しようとしないから。多いんだよね、隠れて暮らしてても知った瞬間目の色変える人たち」
なんとなく、これまでの生き方を想像してしまう。
この子だけじゃない。
ウチに居る子たちの境遇を。
「そもそも別世界に行くなよって話だけどね」
「いいんじゃない?好きに生きたら。やることやってるなら、あとは自由でしょ」
ビールを傾け、月を見上げる。
「そもそも、他人のために生きてるってアホらしくない?」
おそらく、いや絶対神に言っていい言葉ではなかったけど。
なんとなく、今その言葉を伝えないといけない気がした。
「メノメノ、えっらそー!……そりゃミミちゃんも懐くわ」
「なんか言った?」
最後の方小声で聞こえなかったけど。
「寝るぞー!寒いー!」
神ちゃんはそのまま部屋の中に入っていってしまう。
「うん、月がキレイ」
たまにはこういう酒も悪くない。
次の日有休を使った。
見事38.7度。
夜のお酒は暖かくして飲もうね!




