悪魔がウチにおりまして・196
夜も更けていく。
ホットプレートでお好み焼きです。
まだ終わらない恋愛相談会議。
じゅうじゅう音を立てながら話し合いは続く。
「ここで特別講師の登場ですー」
悪魔が畳をひっくり返す。
鉄板出す前にやんなさい、埃立つでしょう。
「……場違い過ぎません?」
そこから現れたのはターコイズブルーのザリガニだった。
「なにこれ、食材?」
神ちゃん!こんなモノ食べたらお腹壊すよ!
「場違いなんで帰り……」
「唯一の妻帯者です、立派な講師ですー」
そそくさと逃げ出そうとするザリガニを悪魔が止める。
ウソでしょ!?
「しかも、ジェット2号のお相手はネズミさんなのですー、逆玉なのですー」
「ほう、それは……興味深いですねぇ」
今日だけで7本目を開けながら牛が目を細める。
ネズミに反応したとか、無いよね?
「いえ、そんな特別なことは。沢で流されていた帽子を拾ったら懐かれて。そこからトントン拍子なんで何もしてないっすよ?」
ザリガニはお好み焼き(サクラエビ入り)を食べながら語る。
「……このザリガニ、食材?」
神ちゃん、2回目だし。落ち着きなさい。
「でも、ごんさん領域のネズミって本当に良いところのお嬢しかいないんじゃ?」
牛もかつお節を散らしながら尋ねる。
「そうなんですよー。なんか形式ばってて。何なら結納の前にですね……」
そこからの物語は、身分違いの恋とそれを乗り越えるためのドラマだった。
父親との対立、母親の援助。
お嬢様の純愛と、許嫁との激闘。
元より、あちらからの恋慕。
ザリガニに罪はない。
しかし、巻き込まれた恋の渦、しかしてその結末とは!
「ってな感じでどうにかこうにか」
なんだなんだ。
一瞬昼メロが入った気がするぞ。
「やっぱり焼こう?丸焼き」
こんな神ちゃんに守られていると思うと不安しかないわ。
「特別講師、ロイヤル9号でしたー」
皆、やる気のない拍手をしてお好み焼きに注意を戻す。
「これ、みんなでご飯食べてるだけじゃん」
神ちゃん、今さら気付きました?
ウチにはお好み焼きがある。
お姉が陰で「ザリガニに負けたー!」と喚いてる。




