悪魔がウチにおりまして・193
ウチには悪魔がいる。
顔の結構広い悪魔が。
「ミミちゃんいますかぁ?」
畳をひっくり返し、生えてきたのはギャル……ではなく、神ちゃん。
まぁギャルに変わらないか。
「まだ帰ってないわよ」
「そうですかぁ。待ってていいですか?」
神に問われる。
これだけ言うと人類存続のカギでも握った気分になるね。
「こんばんは、今日の晩御飯は……なるほど」
ウチの居候外部班所属の牛がなにか納得したように頷く。
「ウシウシ、どうしたのー?」
「ヤギさんが『今日は外で食べます』と言った理由が分かっただけでして」
神ちゃんはその言葉に対して露骨に顔を曇らせた。
一気に湿っぽいというか暗いというか。
ごめん、揚げ物で手が離せないから放置です。
「すーさん、ヤギさんと喧嘩でもしました?」
気安いな、牛。
「喧嘩って言うか……やっぱりかぁって」
曰く。
相変わらずアプローチしてもなかなか振り向いてもらえず、今日は悪魔に相談するために来たのだとか。
「好きな物あげてるし、ちゃんと休みの日にはご飯作ったりしてるのに」
今にも泣き出しそうな神ちゃん。
話を聞いていて冷や汗が流れる。
ちらりと牛を見ると牛ですら苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「あのー。ヤギさんとすーさん、まだ付き合ってないんです?」
マジで、それ。
牛の言葉に顔を赤らめてをぶんぶんと振る。
「ほら!女の子から告ったらはしたないって思われちゃうし!できればやっぎーから告白してほしいって言うか!」
恋する乙女は盲目というけど、その気持ち全然伝わってないと思われますよ。
牛も同じように考えているのか、珍しく腕を組む。
「すーさん、今の世の中は男女平等が叫ばれています。それで損をするのは大抵じょせ……」
「やめなさい、燃えます」
何を口走るか、この偶蹄類。
「神ちゃん、たぶんだけど羊、あなたの気持ち気付いてないよ?」
「うっそ?こんなにわかりやすいのに?」
そうだけどさぁ、重いんよ。行動の色々が。
「ほら、ネコも追っかけたら逃げるでしょ。それと同じです」
表現マイルドだから許しましょう。
「……まぁじで?」
こっちからしたら今の今まで気付いていないあなたに「まぁじで?」なんですよ。
「ニンゲンー、お腹減りましたー」
何も気にしない悪魔が畳から生えてくる。
ウチには神がいる。
……コロッケ、食べるんだ。




