悪魔がウチにおりまして・20
ウチには悪魔がいる。
悪魔を正座させる、真なるアクマが。
「で、あんたみたいなのがなんでここに居るわけ?」
首を傾け、コキコキと骨を鳴らしながら悪魔を睨みつけるお姉。
悪魔と羊、そしてクモは身を強張らせて一列で正座している。
間の悪いタイミングで飛び出してきた羊が一番ビビっている。
「コハクお姉、そんなに睨まなくても…。この子たち、悪さはしてないし」
ウチの米を大量消費していた過去もあったが、ちゃんと食費を入れてくれるようになったのでチャラである。
「メノウは黙ってて。魅入られた人間がどんな末路になるか知らないわけでもないでしょ」
ギャグテイストの考えなどお構いなしにお姉はこちらにまで銀ナイフを突き立てる。
「言い分があるなら聞いてやらんことも無い。ま、悪魔の言葉なんて信用しないけど」
ナイフの切っ先を悪魔たちに向け直す。
マズイ。本気だ。
ビビりながらおずおずと手を挙げて釈明をしようとするクモ。
話すことができないのにどうするのか。
「あんたは別にいい。なんでここにいるかは聞きたいけどね」
…クモは、良い?
「あの、よろしいでしょうか…」
次に手を挙げたのは羊である。
「あんたが一番信用に置けないんだけど?」
「じゅ、重々承知してますが…別に私共は悪さをするためにここにきているわけでは…」
「基準が違う。あんたらの悪さとこちらの悪さ、質の違うことくらいわかってんだろ?」
苛立ちを隠そうともしないお姉。
このままだとそのまま2匹の悪魔を祓ってしまいかねない。
「ひっく、ひっく…」
一触即発の雰囲気に似合わない、鼻をすする声が張り詰めた場を割いていく。
「…もう、ここに、来ません…。ニンゲンといるの楽しかったから…。いつも構ってくれて、美味しいごはん一緒に食べてくれて…あったかかったから…。ごめんなさい、迷惑かけて…」
そのまま、悪魔は嗚咽で何も言えなくなってしまう。
「悪魔…」
その時お姉がポケットからスマホを取り出して話し始める。
「何?今取り込み中。え?人に悪さをする悪魔が出た?すぐに退治しなきゃね。わかった、それじゃ…。急用。メノこいつら見張ってて。戻ったときに悪さしてたら容赦しないから。じゃ」
言うが早い、お姉は颯爽と玄関から帰ってしまった。
「にににに!逃げましょう、もうこちらに来ないように!」
パニくる羊。固まる悪魔とクモ。
「大丈夫、ここに居て良いってさ…電話、鳴ってなかったよ」
その言葉に目を丸くする3匹の人外が可愛く見えたのは内緒。
ウチには悪魔がいる。
寂しがりで、ウチの姉の心にも取り入ってしまった、悪魔が。




