夜、公園にて
いやはや、間の悪い。
せっかくニンゲンが油断していると思ったが、やはりあの執行者は厄介だね。
そうは言っても順調に危機感を煽れていることを鑑みると上出来と言わざるを得ない。
問題があるとするなら、あのニンゲン、予想以上に力が強い。
勘も良いからね、どう対処しようか……。
「考え事かい?」
声の方に振り向くと、そこには先ほどまでニンゲンと対していたサビネコが座っている。
「困るんだよ、キミみたいなのがいるからボクがリスクを犯して顔を出す羽目になった。とんだ貧乏くじじゃないか」
何を言っている、だってボクは……。
「まだ気付いていないのかい?……説明の暇も無いようだけど」
※
「ご協力、感謝します。末端でしょうが辿れるところまで辿ります」
「いえいえ、困ったときはお互い様。そのニセモノ、ボクも目障りだったし助かったよ」
兎田がぐったりとしたサビネコの首を掴んで持ち上げる。
先ほどニンゲンと会っていたのはこちらだった。
「どうやら、あなたのコピーのようですね。ずいぶんと雑な仕事をなさる」
「それには同意。こんなことしてくれたせいで、ボクがニンゲンの家に遊びに行けなくなっちゃった」
ふぅとサビネコはため息を吐く。
「そもそも遊びに行っていいご身分でしたっけ?」
兎田の目は露骨にいぶかしんでいた。
「羽くらい伸ばしてもバチは当たらないでしょ。キミたちはちょくちょく顔出してるじゃない」
「半分は仕事ですので」
「半分も遊べるのがうらやましいよ」
そこに風が吹く。
「嫌な風だよ」
「ですねぇ」
兎田の合いの手にネコは目を細める。
「本当にそう思ってる?」
「全く」
ネコは苦々しい顔を浮かべるのだった。




