悪魔がウチにおりまして・188
ウチらは焼肉に居る。
私と悪魔、そして牛が。
「ミミさんって、よく刺されませんよね。ボクは気にしませんけど」
今回の焼肉、前にカエル狩りした時のボーナスが出たらしく奢りという事でついてきたんだけど、牛にも声かけているのは意外だった。
何せ場所は焼肉。
牛肉……うし。
うし。
「別にボク、牛本体じゃないんで。食べますよ、焼肉。お姉さん、ビールおかわり」
食べるんかい。そして遠慮ないな。
「ミミさんが奢ってくれるんです、遠慮してたら損じゃないです?」
牛はそう言いながらしっかり焼いたタンをサンチュに巻いている。
「そうですよー。せっかくボーナス出たんです。いいお肉食べてご褒美にするのですー」
地雷子モードでビビンバ混ぜ混ぜするの、似合うなぁ。
私も倣い、肉をトングで掴んで網に乗せる。
滴る脂。しっかり落としてせめてもの抵抗をしないと。
「ニンゲンさん、焼肉は罪ですのでしっかり太りましょう」
牛はサンチュにタンを3枚包むとゆっくり咀嚼を始める。
贅沢な!
「牛さん!3枚はギルティです!裁かれるのです!」
「ミミさん、そのビビンバにワカメスープを注ぐのです」
「ま、まさかそんな……。ゆ、湯気まで香ばしい!?」
言われた通り、熱々のビビンバにワカメスープをひと掬いすると、石の器の熱で一気に音と香りが立ち込める。
牛、焼肉楽しみすぎだろ。
「ほら、ニンゲンさん。ウーロン茶と一緒に飲めば脂は分解されます。罪の味を楽しみましょう」
ええい、悪魔め!
牛に言われた通りウーロン茶で喉を潤しつつ、肉を食べる。食べる。食べる。
「ニンゲンさん……焼肉はね、ぜいたく品なんです。その贅沢を噛みしめられるのは短い時期です。具体的に言うと40前までです。楽しめる時に楽しみましょう」
1,000年単位で生きている奴らに言われると説得力ないんだわ。
「……念のため聞くけど」
「なんでしょう」
「ボーナス、いくら出たの?」
悪魔に出てるってことはアンタにも出てるんでしょ。
牛はアゴに手を当てて考える。
「ミミさんと同額か分かりませんが3桁と言っておきま」
「シャトーブリアンください」
「みー!?」
後から悪魔に聞きました。
マジで100越えていたそうです。




