悪魔がウチにおりまして・187
私は布団の中に居る。
筋肉痛で出られないのだよ!
「宿主殿も、見境というものを覚えていただきたく。カエル退治に出かけて、筋肉痛だけで済んでいるのは奇跡ですよ?」
狐は私の背中に軟膏をぬりぬりしながらため息を吐く。
私だってあんなに大きいって知っていたら行かなかったもん!
「こちらの世界の常識と異なるのは知っているでしょう。まちてや魔界。興味本位では命がいくつあっても足りません」
ぺしん!と軟膏がズレないように湿布する。
心なしか、力強いのは気のせいではないだろう。
「反省してます」
「言葉だけは受け取っておきます。どうせ面白そうなことがあったら、あつもの喉元でしょうから」
なんか、お母さんみたいな理解をしてくる。
布団に突っ伏している時点で何も言えないけど。
「ねぇねぇ、狐ちゃん。興味ついでに」
「まっっったく懲りていない精神少ち尊敬ちます」
狐、呆れる。
だって今聞ける子狐しかいないんだもの。
「悪魔がカエル退治するとき、槍の柄で雷落としてたんだけど。アレって槍のままだとダメだったの?」
ふむ、と狐は正座をする。
「ミミ殿に限らず、某たちにとって武器というものは基本的に自らの力を抑えるためのもの。おそらくですが矢じりの部分がその役割だったのでしょう」
武器で、抑える?
「カエル狩りの時、力抑えて戦ってたの?なんで?」
それなら私はこんな痛い思いしていないというのに。
「過ぎたる力は身を滅ぼちます。実際カエルが跡形も残っていなかったでしょう?」
確かに、雷を落とした後の焼け野原。
冷静に考えたらゾッとするはなしだよね。
「悪魔の本気って、恐ろしいわね」
思わずつぶやいた言葉に狐は首を傾げる。
「宿主殿、ミミ殿は本気など出していませんよ?もち本気だったら兎田殿諸共こちらに帰ってきていないでしょう」
なかなか笑えないんですが。
「宿主殿、本来我らはヒトと慣れ合う存在ではないのです。ミミ殿だけではなく某も。なので我らにそれなりの敬意を……」
「なら狐ちゃんのご飯減らしていい?」
狐は押し黙る。
腕を組む。
「敷居が低いことも大切でしょう」
締まらないんだよなぁ。
ウチには人外がいる。
でも、忠告通り距離感は考えよう。
簡単に滅ぼすだけの力があるのだから。




