悪魔がウチにおりまして・185
「伝承
ニンゲン界から襲来した魔族は、運の悪く春カエルの大規模な繁殖期と重なり、あたら若い命を散らすの…」
「散らさん!」
牛、後でしばく!
目の前にいる20メートル強のカエル、その着地をギリギリのところで躱すと足に槍を突き立てる。
しかしカエルはそんな攻撃など意にすることなく、むずがゆそうに足払いをしている。
「悪魔!コレどうすんの!」
悪魔は両手にブレードを装着してカエルに肉薄している。
「ニンゲンー。脚は強いのですー。頭、頭を狙うですー」
「できるかぁ!?」
20メートル越えてるって言ってるでしょ!
悪魔はカエルの背中をよじ登っているが、粘液で滑るようでブレードを突き立てながら必死に食らいついている。
背中を刺されるとカエルは後ろに倒れ込み、悪魔を振り落とそうとする。
「いやぁ、今年のカエルは元気ですね」
牛はのんびりとした口調で手にスパイクの付いたボクシンググローブを着け、倒れ込んだカエルの目玉にブローする。
惜しくも瞬きと重なり、目にダメージを与えることはできなかった。
「コレ!雑用!?」
「雑に用いられてるですー」
とんちやってるんじゃないんだよ!
しかし、ウチらも必死ならカエルも必死。
それはそう。
何せ命の奪い合いなんだからカエルも必死になろうというものだ。
狩るか狩られるか。
私の人生がカエルに終わらされるなんてまっぴらだが。
だけど、体格差はどうしようもない。
手足は体重を支えるために強い。
狙うなら胴体なのだが、如何せんその胴も粘液で滑る。
幾度とチクチクしているが跳ね返ることがオチとなる。
「コレ倒せるの!?」
「風物詩ですからー」
家に帰れたら風物詩の意味検索してやる。
「仕方ないですねぇ。カエル君、キミは強かったよ」
牛、いきなり良い声を……おぅ!?
どこから出した、そのバズーカ!
「今度生まれ変わったら……正々堂々やろうな、またな!」
放たれる砲弾。
響く爆音。
まっすぐにカエルに向かって飛来する砲弾は見事、カエルの腹部に直撃した。
「持ってるなら先に使いなさい!」
「ほら、食べる部分減っちゃいますし。それに、これ一発しかありません」
「牛さんー。あわやボクまで吹き飛ぶところでしたー」
少し焦げた悪魔が歩ってくる。
まぁ平気でしょ。
「そんなこと言ってても、負けちゃったら……」
その時、地響きが響く。
牛はのんびりとした口調で話す。
「言ったでしょう?大発生だって」
振り返ると、20メートル級が何匹も飛んできている。
「さぁ、第二ラウンドなのですー」
か、帰してー!




