悪魔がウチにおりまして・19
ウチには悪魔がいる。
あの人に居ることを決して知られてはいけない悪魔が。
休みの日というのは休むに限る。
2人が編み物をしているのを良いことにゆっくりと昼寝をする。
そもそもの話、週5日働いている疲れを2日で癒すことが間違っている。
日ごろの疲れを存分に…。
そんな自堕落な思考を巡らせているとスマホに着信音が響く。
そのまま放置してしまおうか、今堕落の真っ最中なのだから。
しかし、なぜか気になる。
見なければいけない気がした。
そして悪い予感は当たるものだ。
「悪魔!クモ!片付け、隠れて!」
布団から飛び起きて一気に部屋を片付け始める。
「ニンゲン、どうしたんですか?そんなに慌てて…」
「いいから!急いで押入れ!」
のほほんとしている悪魔とクモ。
そんなときに鳴り響く、呼び鈴。
「誰か来たみた…い?」
聞くが早い、押し入れを開き、悪魔とクモを中に放り込んで襖を閉じた。
「隠れてて、絶対物音立てないで!」
『あれー、いないのー?』
小声で2人に説明しているときに外からの急かす声。
「今出まーす!…いきなり来ないでよ、お姉」
「いやー、久しぶり。メノウ、元気だった?」
急いで開けた玄関に立っていたのは、姉であるコハクだった。
「うっわ、狭いねー。こんなところで住んでて窮屈じゃない?」
「独り暮らしならこれくらいでいいの」
靴を履いたまま上がろうとするのを嗜めながら、スリッパを差し出す。
こっそり押入れを背中に向け、かばう位置に立つ。
「そんなことよりいきなり来ないでよ、なんの準備もしてないじゃん」
「良いって、構わないよ…ん?」
部屋に入った瞬間にお姉の眉間にシワが寄る。
マズイ。
「良くない、せっかくだから外でお茶しよ、美味しいパフェが…」
「…メノ、あんたちょっとどいて」
険しい目でお姉は一直線に押し入れ目掛けて直進をしていく。
背中にじんわりと汗がこみあげてくる。
「…いるんでしょ、出て来なさい」
「お姉、なんかいるの?」
白々しいのはわかっているが、認めるわけにはいかなかった。
「開けるよ、覚悟して」
「こんにちはー。美味しい柚餅子を…」
間の悪いことに畳から羊が生えてくるのと同時に襖が開けられる。
中では悪魔とクモが抱き合って震えていた。
ウチには悪魔がいる。
退魔の出来る、姉に見つかってしまった悪魔が。




