悪魔がウチにおりまして・179
ウチには悪魔がいる。
時たまとんでもないことをする悪魔が。
「この襖の中は覗かないでください」
そう言うと悪魔は押入れの中に入っていった。
そろそろ恩を返してくれてもいいのだが。
そんな悠長なことを考えていたら中からぎゅおーん!という機械音。
確かオカリナの時に防音してたよね!?
「悪魔ー!なにやって……」
マジで何してんだ、こいつ。
「み、見てはいけないと言いましたのに……」
押入れの中で悪魔は溶接機を使って何かを造っている。
「そんなん狭いところでやったら火事になるわ!!」
久しぶりに少々本気のヘッドロックをかましてしまった。
「で、なに造ってたの」
既に作られたパーツは大きいのから小さいのまで20個以上。
ここから組み上げる予定なのは分かるし、造り途中も分かる。
「な、内緒……」
首を傾けてゴキリと鳴らすと悪魔は背筋をしゅっと伸ばす。
「ほ、ほら。この前ごんちゃんと映画見たじゃないですか……」
「あぁ、あの特撮?」
狐がドはまりするとは思わなかったヤツ。
「そこにメカが出てきたんですね」
「ほう」
読めた。読みたくなかった。
「だからちょっと造ろうかと」
「警察に怒られるわ」
プラモ作るノリで部屋の中で火花散らすんじゃない!
「でもでも、あと組み上げるだけなのです!カッコ良いのです!」
悪魔は膝にしがみつきながらイヤイヤしている。
「……火花でない?」
「出ません」
「……まぁ、よし」
あまり締め付けても悪いし、ここまであるのだ。
せっかくなので見せてもらおう。
「待ってて欲しいのですー!!」
両手を上げながらさっそく組み上げていく悪魔。
造るのを見ていたら、なんか見覚えのあるフォルムになっていく。
ちらりとロフトを見るとクモと目が合った。
(アンタにもそう見える?)
目線で合図を送るとコクリと頷くクモ。
やっぱり?
「完成ですー!」
鈍色の胴体。8本の脚。数多く配置されたカメラ。
「名付けて!メカクモちゃんです!」
……なんでそのチョイスよ。
ウチにはメカが増えた。
おそらくモデルになったクモは目を輝かせている。
……まぁ、良いか。
気にしたら、負け。




