悪魔がウチにおりまして・178
ウチには悪魔がいる。
最近動画にハマっている悪魔が。
「来たな、ニンゲン!へーんみぎゃ」
変なポージングをしていた悪魔の上にカバンを置く。
呻いた?知りません、しつけです。
「ニンゲン、付き合ってくれないのですか?」
「私は仕事で疲れてるの、今日は何?」
「かっこいいのです!変身してバイクに乗るのです!」
夜寝る前に押し入れで動画を見ているのは知っていたけど、今のトレンドは特撮でしたか。
「ごんちゃん!ご飯を食べたら変身ごっこに付き合って欲しいのです!」
狐、目を丸くする。
悪魔スマホをかざす。
うんうん、イヤホン繋いで偉いねー。
ご飯を食べながら食い入るように見る狐。
お茶碗をかっ込みながらじーっと見ている。
画面をタッチ、一時停止ね。
シンクに洗い物を戻して……再開。
途端狐が涙を流し始める。
そのまま悪魔と目が合うと固い握手。
なんなんだ、この2匹。
「このような……このような奇跡があっていいのですか……」
目頭を押さえながらだばだばと涙をこぼし続ける狐。
「ヒトという生き物がこんなにも美ちい命の使い方をするなんて……某まだまだ修行が足りませんでちた」
そんなに?最近の特撮ってよくできてるのねー。
「でしょう?最後のホイップパイで敵陣の中に突っ込んで行くシーンは涙無くしては見られないのですー」
まてまて、急にアホになったぞ。
「まさか迎撃のためにホイップが防弾に加工されていたなんて、夢にも……」
そりゃ思わんだろうに、防弾ホイップ。
「実はそれにも伏線あったのですよー。ほらヒロインが作ったケーキで歯が欠けるシーン」
「なんと!あんな最初にあった”ちーん”が最終決戦の伏線ですと!?」
脚本書いた人、正気?
なんでヒロインが防弾兵器作ってんのよ。
「いやー、次回作も決定しているので楽しみなのですよー」
「ミミ殿、コレは封切り日に行くしかありませんね!」
盛り上がる小動物2匹。
上からクモがため息交じりで見下ろしていた。
ウチには子どもがいる。
思っているよりも、ニンゲンの文化を楽しんでいるケモノが。




