悪魔がウチにおりまして・175
久しぶりに羊がいる。
念のためですが、単体です。
「いやー、ここで食べるご飯は美味しいですな、おかわり」
「30円でーす」
ただ飯食いの癖に人にやらせようだなんて、太い羊だ。
「お安いですね、おつりは出ますか?」
「自分でやればいいの」
本当にがま口を取り出して払おうとするもんだから、必死に止める。
ウチ周辺で一番トラブルを起こすコヤツだが、最近は大人しい。
「いやぁ、ニンゲンさんのおかげでぽん吉くんが次なる商品を開発してくれまして。産地直送てんぷらセット、これがなかなか好評で」
この前教えたてんぷらをすぐさま商品にするとは。
羊よりもよほどモグラのほうが商売人しているなぁ。
「ぽんちゃん、どんどん従業員増やしてるのですよー。みみずさんたちがたくさん頑張ってましたー」
モグラが社長でみみずを雇っているのか。
割と考えたくない光景だけどね?
「あのモグラやりおる……」
「ニンゲンは社長しないのですかー?」
悪魔が曇りなき眼で聞いてくるけど社長なんてものはなろうと思ってなるものじゃないからね?
「私はそういうややこしそうなの、パスかなー」
「ホント止めておいた方がいいです……。風のうわさで反社から会社を譲り受けて借金漬けになった知り合いがいます……」
シャレにならんこと知ってるなー。
「その人ってヤギさんの担当でしたっけ?」
「いえ、別部署です」
まさかそれで魂回収とかしてないだろうな。
……ちょっと聞くの怖いからスルーです。
「ただいま戻りまちた」
おや、ここに別口の社長が。
「狐ちゃん、遅かったね。先食べてるよ」
「お構いなく。取引先と会合をちてきたので」
おお、なんか社長っぽい。
だが、狐。
キミはやってはならないことをした。
「……狐ちゃん、ご飯要らないなら先に言う」
頭をしっかりと掴んで持ち上げると眼と鼻、数センチのところに近付けてお説教。
「も、申ちわけございません……」
ガクブルし始めたのですぐに開放。
床に降ろされると泣きながら悪魔に抱きついている。
「いい?ご飯を無駄にすること、まかりなりません。キチンと連絡しない場合、次の日からご飯は無いと思いなさい!」
こそっと羊が手を上げる。
「あ、明日は私、外で食べますので……」
「アンタは逆!来るときに連絡しろ!」
ウチには居候が多い。
ご飯作る苦労考えろっての。




