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悪魔がウチにおりまして・17

ウチには悪魔がいる。

幼少期を知られることを恥じている、悪魔が。


羊の持ってきたアルバムを悪魔はよほど見られたくないのか、部屋の中で運動会が始まる。

「ヤギさん、ダメ―」

「悪魔さん、こちら。アルバムの方へー」

…うむ、平和だ。

ただ、ヒヅメ二匹が走り回って畳が傷むのはいただけない。

「クモー。捕獲!」

クモの自室…実際は天井で事の顛末を見守っていたクモは声に反応してどちらを捕まえたらいいのか、走り回る2匹を見比べる。

「悪魔の方」

了解とばかりに悪魔に近づいて糸でがんじがらめにする。

「ひ、卑怯です。あなたに人の心は無いのですか!」

クモに向かってそんなことを言っているが、そりゃヒトの心はないだろうと心の中で突っ込む。

「あの子を捕まえるほどの糸を…ますます不思議ですねぇ」

じっと見つめる羊。ビビるクモ。

身振り手振りで「そんなことよりアルバムを」と促していることがわかる。

…節足動物の意志を読めるようになってしまったか。

「そうですね、せっかくなのでみんなで見ましょうか」

「鬼ー、悪魔ー」

アンタも悪魔でしょうに。


羊が埃のかぶった重厚な本をめくると肖像画が描かれていた。

「…写真じゃないんだ?」

「開発されたのは最近ですからね」

最初は悪魔がおくるみに包まれている絵画が描かれている。

絵ごとに見開きのページには何やら文字が書かれていた。

「アルバム専業の悪魔もめっきり見なくなりました」

あっちの世界も時代の流れで職が変わるのかと思うと感慨深いものがある。

糸でぐるぐる巻きにされた悪魔が隣に座る。

「アルバムのおじさん、今は悪人討伐の仕事してるんでしたっけ?」

職の幅、広すぎない?

絵のため、記念日だけなのだろう。学校に入学した時や卒業した時、武器を構えた姿や冠を付けられた時の絵が並んでいる。

「全部良い絵じゃない。なんであんなに見られるの嫌がったの?」

「そ、そうでしたね!いやーすっかり忘れて…」

「ニンゲンにはこの文字読めないんでしたね、えっと…『本当に卒業出来てよかった。校舎を半壊させたときにはどうしようかと思った』」

ページをめくるたびに文字を読み上げる羊。

そこにあったのは悪魔の失敗を心配する、親の言葉ばかりだった。

校舎半壊に始まり、地殻変動、遺物破損など壊して謝ることばかり書かれていた。

「…読んじゃってごめんなさい」

羊が謝った!?


ウチには悪魔がいる。

幼少期、大量破壊を繰り返してしまった、悪魔が。

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