悪魔がウチにおりまして・164
私は綿菓子の上を歩いている。
そんなわけないのだが。
天使にいきなり出頭命令をされ、私は否応なしに連れて来られた。
ふわふわの雲の上。
歩きづらいったらない。
「コレを履け」
天使から渡されたサンダルに履き替えると、なんでか歩きやすくなった。
「コレすごい!」
だから天使たちはこんなサンダル履きなのね。
「天使さん、もう少し小さいのは無いのですか?」
渡されたサンダルがぶかぶかで文句を言う地雷子ちゃん。
「ほら、身体の方を調整するのです」
地雷子にアドバイスするイケメン。
「なんでお前らがいるのだ?」
天使、来ていることに気付いてなかったの?
「せっかく神ちゃんに会えるならと思って」
「私はこちらの世界もお取引させていただこうかと」
気楽な悪魔と菓子折りを持ってきている羊。
呆れて物も言えないんですが。
「あの、なんで私が出頭?」
そもそもここに来る羽目になった私の出頭命令。
理由もなく強引に連れて来られたんだから、その本人に直接文句を言ってやらないと気が済みません。
「いつも思うが、その蛮勇は時と場を弁えろよ?」
天使、割と本気の注意、いや警告かな?
「ヤバそうならさすがに言わないわよ」
「それだと良いのだがな」
「そうですね」
……ん?
1人多くない?
「相手の力を見た目で判断しないほうがよろしいかと」
ウチらの後ろに居たのは、私の肩ほどの背丈しかない女の子が立っていた。
「心臓に悪い」
「あら?心臓など無いでしょう?」
クスクスと笑う女の子。
なんとなく察してしまった。
「ねぇ、天使。もしかしてこの子?」
「そうよ、我が仔。そちらの言葉では神というのかしら」
えっと?
この女の子が神様?
「冗談でしょう?」
「相変わらず怖いもの知らずねぇ。それが良いところなのだけど」
笑みを崩さない自称神様と、冷や汗を流す天使。
「神ちゃーん!久しぶりですー!」
「ミミちゃーん!」
駆け寄る悪魔に両手のひらを捻るように振っている。
ギャル、2人だよなぁ。
私は雲の上に居る。
死んでないからねー!




