悪魔がウチにおりまして・163
ウチには悪魔たちがいる。
寒さにめっぽう弱い悪魔たちが。
『明日、全国的に寒さが戻り、ところにより雪が降るでしょう』
唐突に聞こえる天気予報。
もう春だというのに寒さがぶり返す、だと?
すでにコートはクリーニング済み、出すわけにもいかない。
明日の服は着ぶくれで過ごそうかと考えているときに悪魔が箸を落とした。
「雪……なのですか」
あー、この子寒さに弱かったっけ。
「雪とは、世界を漂白し、存在を消すことを目的として神が降らせる終末兵器、ですよね」
違います。
前回の雪ですっかりこじれてしまって……。
同じくアナウンサーの声を聞いたクモはカタカタと震えながら分体を集めて作戦会議を始めた。
「ところによりって言ってるからここは平気じゃない?」
私の言葉に悪魔はびしっと指を立てる。
「甘いのです、ニンゲン!神はそんな甘くないのです!」
「たかが雪程度で主を愚弄するな」
音もなく現れた天使。
うっわ、久しぶり。
「人の仔、じろじろ見るな。不敬だろう」
「天使さーん!雪を降らさないように神ちゃんに頼んで欲しいのですー」
待て。
なぜ天使より軽くなる?
「主が雪など担当しているわけがないだろう?」
表情も変えずに話す天使。
相変わらずだなぁ。
「で、天使。なんで来たの?」
「そうだ。人の仔、出頭命令が出ている」
……。
はい?
「ニ、ニンゲン?ボクでもそんなことないというのになにしたというのです?」
ボクでもと言うあたり、自分がそこそこ危ないことしている自覚があるのね。
「それって本当に?ガチ?」
「じゃなきゃこんな寒い時にこちらに来ない」
この子も寒がりか。
じゃなくて。
「ちなみに断ることは?」
私の問いに天使は表情も変えない。
「分かっていることを聞くな」
デスヨネー。
かくして、私は天使の世界に出頭することになりました。
ドユコト!?




